2020 Fiscal Year Research-status Report
神経芽腫の栄養飢餓耐性獲得と抗がん剤耐性獲得機序におけるTFAP2Eの役割の検討
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20K17566
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
長崎 瑛里 日本大学, 医学部, 研究医員 (70845354)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 神経芽腫 / 栄養飢餓耐性 / 抗がん剤耐性 / TFAP2E |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に、transcription factor activator protein-2 epsilon (TFAP2E)の発現抑制により神経芽腫細胞がグルコースを中心とした栄養飢餓耐性を示す機序と、TFAP2Eの標的遺伝子について検討を行った。 神経芽腫細胞株NB1, NB9にsiRNAを導入してTFAP2Eの発現を抑制し、グルコース欠乏下での細胞生存率を検討した。結果、NB1においては、TFAP2Eの発現を抑制するとグルコース欠乏下でも生存率の低下を示さなかったが、NB9ではこの傾向を認めなかった。 TFAP2Eの発現を抑制したNB1細胞はグルコース欠乏下でも生存率の低下を示さないことから、①ミトコンドリア呼吸または解糖系が活性化されATPが産生されているか、②低ATPに対する耐性を獲得している可能性を考えた。そこで、グルコース欠乏培地および通常培地における細胞内ATP量がTFAP2Eの発現抑制により変化するか、intracellular ATP測定キットを用いて解析した。結果、グルコース欠乏下におけるTFAP2E発現抑制細胞のATP量はコントロール細胞と同程度であり、正常培地におけるTFAP2E発現抑制細胞やコントロール細胞のATP量よりも有意に低かった。このことから、TFAP2Eの発現を抑制した細胞は低ATPに対する耐性を獲得している可能性を考えた。 一方で、TFAP2E発現抑制により顕著に発現が変化する遺伝子を絞り込むことを目的にマイクロアレイを用いた網羅的発現解析をおこない、TFAP2Eの標的遺伝子の候補を挙げた。これらの遺伝子がグルコース代謝や低ATP耐性に関与しているか否か、現在解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は主に、TFAP2Eの発現抑制により神経芽腫細胞がグルコースを中心とした栄養飢餓耐性を示す機序の検討と、TFAP2Eの標的遺伝子の探索を予定していた。 TFAP2Eの発現抑制によりNB1細胞がグルコースを中心とした栄養飢餓耐性を示す機序として、低ATPに対する耐性を獲得している可能性が示唆された。マイクロアレイによる網羅的発現解析の結果とも合わせ、TFAP2Eの標的遺伝子の候補がグルコース代謝や低ATP耐性に関与しているか否か、現在解析している。 以上より、現在までの進捗状況はおおむね順調に進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
マイクロアレイによる網羅的発現解析で候補に挙がったTFAP2Eの標的遺伝子がグルコース代謝や低ATP耐性に関与しているか否か、グルコース欠乏実験を行い解析する。 また、ATP濃度の低下により活性化されるAMPKはp53との相互作用により下流のシグナルを活性化し、細胞増殖の停止を引き起こす。TFAP2Eの発現抑制下ではこの経路が不活化されている可能性が考えられるため、p53、AMPKの発現・活性化状態、細胞周期関連因子などの発現がTFAP2Eの発現抑制により変化するか、Western blotingで解析する。 さらに、栄養飢餓耐性獲得と抗がん剤耐性獲得の機序の関連性を検討する。NB1細胞にシスプラチンまたはアドリアマイシンを添加し、これまでに同定したTFAP2Eの標的分子の発現を変化させたときの生存率をWST-8 assayで解析し、抗がん剤耐性が改善することを確認する。最終的には、腫瘍モデルマウスにおいて、標的分子の発現を変化させたときに抗がん剤耐性が改善されるか否かについての検討を行うことを目標とする。
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