2020 Fiscal Year Research-status Report
乾燥保存臓器の再細胞化と移植に関する研究:小口径人工血管の開発
Project/Area Number |
20K17569
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Research Institution | The Tazuke Kofukai |
Principal Investigator |
石野 直明 公益財団法人田附興風会, 医学研究所 第2研究部, 研究員 (80585133)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 乾燥保存 / 脱細胞化 / 人工臓器 / 組織工学 / 再生医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体組織の乾燥保存,脱細胞化技術,細胞培養技術を併用することで,再生医療に応用可能な小口径人工血管の開発を目指し研究を進めている.貴重な生体由来材料を長期間乾燥保存し,拒絶反応の原因となるドナー由来細胞を除去した後,レシピエント細胞を用いて再細胞化させることで,生体内で自己組織化する再生型の人工臓器作製に応用することが本研究の目的である. 2020年度は,生体組織の立体構造を破壊せずに乾燥保存させるための条件を検討した.古くから乾燥耐性を呈することが知られているトレハロースを10%以上の濃度で組織に浸透させることによって,ブタ頸動脈を用いた実験においては,乾燥保存による立体構造や力学特性の変化を抑えることができた.ラット腎臓を用いた実験においては,腎臓の微細構造の破壊を抑えることができた.乾燥保存した組織を界面活性剤処理にて脱細胞化したところ,乾燥工程を経ずに脱細胞化処理した場合と比較して,脱細胞化効率が向上し,低濃度の界面活性剤を用いて短時間に脱細胞化させることができた.トレハロースは,ヒト細胞内へは容易に取り込まれないため,トレハロースを浸透させた組織を乾燥させると,除去すべき細胞にのみストレスを加えることができ,脱細胞化効率が向上したと考えられる. これまでの研究成果によって,乾燥保存と脱細胞化処理との組み合わせの有用性を示すことができた.しかし,本手法で作製した脱細胞化組織の細胞生着性や移植後の生体適合性の評価はできておらず,今後,培養細胞を用いた再細胞化や移植モデルによる生体内での自己組織化の評価を行う必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で作製した脱細胞化組織に,培養細胞を生着させる実験の一部を2020年度内に開始する予定であったが,実験に必要な細胞を培養することができなかった.この理由は,2019年度末頃より感染が拡大した新型コロナウイルス感染が,研究代表者が勤務する病院の臨床業務に影響し,予定していた研究時間を確保することができなかったためである.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は,特に培養細胞の浸潤性試験や小動物(ラット)への移植実験を精力的に進め,本手法の有用性を検証する. これまでの研究成果では,乾燥保存させた臓器の構造が温存されるかという点について,組織染色や力学特性試験によって評価をしたが,生体臓器の複雑な機能が温存される最適な乾燥処理条件を明らかにすることで,生体臓器の長期乾燥保存の可能性についても検討する予定である.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染の影響で予定していた研究時間を十分に確保することができず,2020年度に予定していた培養細胞を用いた再細胞化や移植モデル実験を行うことができなかったため,次年度使用額が発生した.2021年度,この次年度使用額を2020年度に予定していた培養細胞購入費や移植実験のために使用する.
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