2021 Fiscal Year Research-status Report
胎児期~新生児早期からの腸管免疫寛容誘導により壊死性腸炎治療の可能性を探る
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20K17574
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山木 聡史 東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (30747887)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 壊死性腸炎 / 低い出生体重児 / 新生児 / 免疫寛容 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の新生児医療の急速な発達に伴い、低出生体重児の救命率は飛躍的に向上したが、それに呼応し壊死性腸炎 (NEC, necrotizing colitis) も増加しており、新たな課題として注目を浴びている。低出生体重児におけるNECの発症機序として腸管免疫の未熟性を背景とした過剰免疫応答が知られている。胎児性Fc受容体 (Neonatal Fc receptor, FcRn) が経口免疫寛容の誘導に重要と考えられているが、NECの発症と経口免疫寛容破綻の関連性は不明である。 本研究ではFcRnの経口免疫寛容の誘導機能に注目し、マウス経口免疫寛容NECモデルを作成し、NECの発症におけるFcRnの機序の解明、及びFcRn を介した免疫寛容の誘導によるNEC発症の予防法を確立することを目的とし、マウス経口免疫寛容NECモデルを作成し、その病態の解明及び治療法の開発を目指す。食事抗原に感作された母体由来のIgG及びその免疫複合体を含む母乳を介した新生児への経口免疫寛容の誘導がNEC発症の抑制に寄与する事、また免疫複合体の新生児への経口投与(ワクチン)のNEC治療法としての有効性を解明する。さらにこの免疫寛容の成立に重要な胎児性 Fc 受容体(Neonatal Fc receptor, FcRn)の欠損マウスを用いたNEC 病態解析と、FcRnヒトホモログであるFCGRT遺伝子のヒトNEC症例でのゲノム解析を行い、NEC発症におけるFcRnの機能を明らかにする。 本年度はマウス経口免疫寛容NECモデルの確立を目指し動物実験実施の準備を進めていたが、動物実感室の改修や研究代表者の遠隔地への転勤、コロナ感染拡大に伴う移動などの制限のため、実験を進めることが困難で、研究遂行に遅れを生じた。 また胎児マウスを使用する動物実験倫理上のハードルも高く、モデル確立に難渋している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度はマウス食事抗原感作誘導によるNEC発症モデルを確立及びNEC誘導モデルの確立を目標としていたが、研究者の長期出張、さらに新型コロナウイルス感染症拡大による県外移動制限が継続しており、動物実験実施が困難な状況であった。また東北大学医学部の動物実験棟改修工事が行われており、実験、マウスの飼育環境の確保が困難な状況が続いている。実験計画を進めるうえで、胎児マウスを使用し、ストレスを与える動物実感倫理上のハードルも研究を進めるうえでハードルになっている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していたNEC発症モデルを確立及びNEC誘導モデル以外のモデルについても検討し、安定したモデル確立につとめるとともに、研究代表者の以前所属していた研究室でMemory-phenotype CD4+ T 細胞による腸管虚血再灌流障害の増悪機構の解明に関する研究が進んでいることから、マウス腸管虚血モデルにおける腸管での胎児性 Fc 受容体(Neonatal Fc receptor, FcRn)発現などを免疫組織染色などで検討し、予備実験を進めていきたいと考えている。新型コロナウィルス感染拡大に伴う移動制限なども緩和されることが見込まれるため、研究を進めて遅れを取り戻していきたいと考えている。 現在、所属する研究室で、メガバンクとの共同で、胆道閉鎖症の疾患感受性遺伝子のゲノム解析が進んでおり、壊死性腸炎感受性遺伝子の解析についても計画を相談中である。本研究の胎児性Fc受容体 (Neonatal Fc receptor, FcRn)遺伝子変異などについても関連する研究成果の出ることを期待している。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は当初計画していた実験(免疫寛容モデル作成等)を次年度に延期することに生じたものであり、延期した実験に必要な経費として、令和2, 3年度請求額と合わせて使用する予定である。 コロナ感染症収束に伴い、現地開催の学会なども可能であれば参加し、成果などを報告したいと考えている。
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