2020 Fiscal Year Research-status Report
心停止ドナー肝移植の確立に向けて -灌流装置によるグラフト評価と臓器再生-
Project/Area Number |
20K17575
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
柿崎 裕太 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (80838037)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 臓器保存 / マージナルドナー / 灌流保存 / 心停止ドナー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は灌流装置を用いて,マージナル肝移植冷保存後酸素化灌流プロトコールとリアルタイム臓器評価法を確立し,臨床応用可能な灌流装置の開発とマージナルドナー肝移植によるドナー不足解消を目指すことである.本年はブタ心停止下摘出肝グラフトを用いて,灌流条件や灌流時間,灌流中の胆汁産生量をモニターし,データを蓄積した. 心拍動下に肝臓摘出をする心拍動群(HB群 N=6),および20分の心停止下に肝臓を摘出する心停止群(DCD群 N=4)の2群に関し検討を行った.いずれも肝臓摘出後は2時間の冷保存後,灌流装置を用い120分の室温酸素化灌流を行った. 胆汁産生量は30minにおいてHB群がDCD群に比べ有意差をもって多かった(17.87±8.80 vs.4.91±2.54,P=0.03)ものの,60min,90min,120minでは有意差を認めなかった.また胆汁産生量は30min(12.68 ±9.85),60min(23.47 ±28.24),90min(31.21±34.19),120min(26.98±22.93)と90min でピークを迎える傾向にあることがわかった.また灌流液中のAST,ALT,LDHは30min,60min,90min,120minとすべてにおいてDCD群で有意差をもって高値であったものの,時間当たりの変化率ではいずれも両群間で有意差を認めなかった. 今回の検討では室温酸素化灌流を行うことで臓器状態の維持が可能であることが示唆された.今後は灌流液の種類やその他の灌流条件を詳細に検討していく方針である.新規灌流装置は灌流圧等のモニタリングが可能であり,移植可能限界にあるグラフトのViabilityの評価法の確立につながる可能性が示唆された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
灌流装置を用いて,心停止下摘出肝グラフトでの灌流実験を行い,順調にデータを蓄積できている.今回までの検討では室温酸素化灌流の至適条件は明らかとはならなかったが,室温酸素化灌流を行うことで臓器状態の維持が可能であることが示唆された.今後は灌流液の種類やその他の灌流条件を詳細に検討し研究を遂行する方針である.さらにブタにおける肝移植実験を行い,心停止下肝グラフトの移植可否についての判断,つまりは移植可能境界にあるグラフトのViabilityの評価法を検討できると考える.
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画通りに,ブタ心停止下摘出肝グラフトを用いて,灌流装置での灌流条件データの蓄積および解析を継続する.至適灌流条件が定まったところで,実際にブタ心停止下摘出肝グラフトを灌流後に移植実験を行い,生体内での評価を行っていく.場合によっては灌流条件の再考することも検討していく. 至適灌流条件が定まってくると,ブタを用いた肝移植実験に移行でき,生存率や生体内の各種パラメーターの評価ができ,移植可否に直結するデータを蓄積可能となる. 本研究の目的は灌流装置を用いて心停止下摘出肝グラフトの状態維持・改善であり,さらには実際に移植可能かを灌流装置で評価を行うことである.新規灌流装置を用いて灌流圧の推移や胆汁産生量等のモニタリングを行い,移植可能限界にあるグラフトのViabilityについて評価法を確立することにつながる可能性があると考える.
|
Causes of Carryover |
本年度の経費はほぼ予定通り使用したが,差額のため若干の残額が生じた. 次年度においても使用経費は予定通りであり,大きな変更なく計画している.
|