2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K17576
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
文田 貴志 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (60866995)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 腸管神経形成異常症 / Ncx / IL5 / neuromedinU / 腸内細菌 / 腸管免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では腸管神経形成異常症のモデルマウスである遺伝子組換え(Ncx KO)マウスにおいて、小腸粘膜固有層における好酸球の増多・遠位小腸組織におけるIL5発現の有意な増加を確認し、腸管神経と腸管免疫の相互作用、また腸管好酸球の生理的意義を関連を明らかにすることを目的としている。 Ncx KOマウスにおける遠位小腸組織IL5の遺伝子発現増多の時期については、6週齢で野生型と比較し増多を認めた。これは4週齢ころから自然死するNcx KOマウスを認める中でIL5の増加が腸管保護的に働いている可能性を示唆するものであった。また、IL5の発現増多において関連するサイトカイン等について定量PCRにて解析を行ったところ、神経ペプチドであるneuromedinUと腸管上皮損傷のサイトカインであるIL25の増加を認めており、両者の増加に伴うIL5の発現上昇により好酸球が粘膜固有層に動員され増多しているといった腸管免疫と腸管神経の相互作用の仮説が考えられた。 IL5産生細胞の同定に関しては、小腸粘膜固有層から細胞単離を行った後に蛍光活性化セルソーティングにてT細胞、好酸球、ILC2、ILC3、神経細胞集団に分けた後にそれぞれの細胞集団においてIL5発現を定量PCRにて調べたところ、Ncx KOマウスのILC2細胞集団と神経細胞でIL5発現が増加していた。このことから神経細胞自体がIL5を放出する可能性についても見出した。 無菌アイソレーターを導入し無菌状態でNcx KOマウスの飼育を行っていたが、8週齢までに全死したことから腸管恒常性の維持については腸内細菌が不可欠であると仮定し小腸内細菌叢解析を目的とし、SPF環境下の野生型マウスとNcx KOマウス小腸内糞便について16SrRNA解析を行ったところ種レベルの細菌において構成割合に群間差を生じていた。現在は菌各種において詳細に解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度はIL5産生細胞の同定を目的として蛍光活性化セルソーティングを行いILC2と神経細胞が候補となるという結果を得た。また、IL5産生機序についてはIL25の関与・神経ペプチドneuromedinUの発現がIL5発現上昇に伴って増加しており、上記のサイトカイン、ペプチドからILC2を介した2型免疫応答の関与が示唆されている。小腸の蛍光免疫組織学的染色においてもNcx KOマウスにおいてNeuromedinUの発現増多が確認できている。 好酸球を選択的に欠損させるΔdblGATA遺伝子とNcx遺伝子をともにノックアウトしたマウスについてはモデルの作成には成功したものの比較検討に十分な個体数は得られていないため現在繁殖中である。 無菌マウスについてはアイソレーターの立ち上げから飼育を開始した。アイソレーターは稼働維持しており、無菌状態での生存率についてのデータは得られたものの、想定外の早期死亡により細胞学的解析・組織学的解析結果が得られていない。SPF環境下での腸内細菌叢構成割合が野生型とNcx KO群で異なっていることは結果として得られている。 上記の結果が得られたことから令和2年度の進捗状況は令和3年度における解析とまとめに大いに貢献できると考えられることから、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度はNcx KOマウスにおいてneuromedinUの増加に関わる機序について検討を行っていく。この機序が判明することにより腸管神経と腸管免疫の相互作用が明らかになると考える。具体的にはどの神経がneuromedinUを放出するかについて蛍光免疫組織染色を用いて検討する。IL5産生細胞については引き続き蛍光活性化セルソーティングを行っていくが、実験により十分な結果が得られなかった場合にはsingle cell RNA-seq解析も検討している。 無菌マウスについては細胞学的解析・組織学的解析結果を得るとともにSPF環境下での腸内細菌叢解析の結果を元にノトバイオートも考慮した腸内細菌を通じた腸管神経と腸管免疫の関与について解析を行っていく。 ΔdblGATA/Ncx KOマウスについては継代しコロニーの確立へ向かっている。個体が揃った段階で腸炎自然発症・DSS誘導腸炎モデル・放射線照射による腸炎モデルの解析を行う予定である。上記解析により好酸球の生理的意義について検討する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては新型コロナウイルス感染症の影響で学会開催が中止となったことにより直接経費としての旅費の計上がなかったこと、施設内における実験動物の新規搬入・繁殖禁止時期の影響によりΔdoubleGATA/Ncx KOマウスの継代が遅れたことによる実験の縮小に因るものである。 使用計画としては、新たな無菌マウスの購入・16SrRNAsequenceによる腸内細菌叢解析、短鎖脂肪酸等代謝産物の解析に使用する予定である。
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