2020 Fiscal Year Research-status Report
Clinical significance of glycosylceramide in the immune microenvironment of breast cancer
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20K17578
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
諸 和樹 新潟大学, 医歯学総合病院, 専任助教 (10745566)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 乳癌 / グルコシルセラミド / 化学療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
グルコシルセラミドは脂質メディエーターの一つであり,細胞損傷を受けると細胞外へ放出され、獲得免疫応答を活性化させる。我々の研究ではヒト乳癌腫瘍部組織においてグルコシルセラミド濃度及びグルコシルセラミド合成酵素遺伝子UGCGの発現が高く、腫瘍免疫微小環境における獲得免疫応答への関与が示唆された。化学療法は乳癌進展を抑制するが、グルコシルセラミドとの関連については明らかになっていない。 本年度は乳癌患者における血清グルコシルセラミド濃度測定の臨床的意義について検討を行った。新潟大学医歯学総合病院消化器・一般外科学分野で2016年3月から2017年10月の間に乳癌手術を施行した179例を対象とした。術前化学療法(以下NAC)の有無やTNM分類(乳癌取扱い規約第18版)を含め、臨床病理学的因子とグルコシルセラミド濃度とを比較検討した。血清グルコシルセラミド濃度はNAC群が非NAC群よりも有意に高かった(P=0.001)。NAC群における臨床学的因子の検討では、グルコシルセラミド濃度はクリニカルステージIIIの症例がクリニカルステージIIの症例よりも有意に高かった(P=0.044)。グルコシルセラミド濃度はクリニカルN2以上の症例がクリニカルN1の症例よりも高い傾向を認めた(P=0.067)。組織学的治療効果判定および血清腫瘍マーカー、病理学的グレード分類において有意差は認めなかった。本研究によって血清グルコシルセラミド濃度は化学療法を受けることにより高くなり、とりわけ進行度の高い癌において高い傾向があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した課題の内、課題Aが社会的事情によりやや遅れているが、課題B、課題Cは予定通りである。 課題A「乳癌細胞移植マウスモデルを用いたセラミドによる腫瘍免疫微小環境の制御機構の解明」についてはコロナウイルス感染症の影響により研究開始が遅れ、令和3年1月に開始した。 課題B「乳癌患者におけるセラミドと腫瘍免疫微小環境との関連性とその臨床的意義」については乳癌患者の血清検体に対するリピドミクス解析の結果を臨床データと照らし合わせ、乳癌化学療法における血清グルコシルセラミド濃度測定の臨床学的意義を明らかにした。 課題C「バイオインフォマティクスによるセラミドと腫瘍免疫微小環境との関連性の検証」については乳癌患者の癌組織検体を用いてRNAシークエンス解析を開始し、解析中である。
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Strategy for Future Research Activity |
課題A「乳癌細胞移植マウスモデルを用いたセラミドによる腫瘍免疫微小環境の制御機構の解明」について動物実験を行い、採取した血液、腫瘍サンプルについてリピドミクス解析を順次行う予定である。 課題B「乳癌患者におけるセラミドと腫瘍免疫微小環境との関連性とその臨床的意義」および課題C「バイオインフォマティクスによるセラミドと腫瘍免疫微小環境との関連性の検証」については患者腫瘍検体を用いたRNAシークエンスの解析結果と臨床データについて統合解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
令和2年度に完遂する予定であった動物実験の開始遅延に伴い、次年度使用額が生じた。令和3年度に、令和2年度に施行予定であった動物実験を施行する予定である。
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