2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K17586
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
野口 浩司 九州大学, 大学病院, 助教 (70844364)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 腸内細菌叢 / 腸管ディスバイオシス / 歯周病 / 移植免疫 / 拒絶 / 皮膚移植 / 腎移植 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、人為的な歯周病菌誘導のマウス腸管ディスバイオシスモデル用い、腸管ディスバイオシスを惹起したマウスに皮膚移植を行い、腸管ディスバイオシスによる移植免疫への影響を調べる研究である。 i)代表的な歯周病菌であるPorphyromonas gingivalis菌(P.g菌)を週2回6週間経口投与し腸管ディスバイオシスを惹起したマウス (P.g群)とPBSのみ投与したマウス(Control群)に、それぞれ同種異系皮膚移植を行い、皮膚移植の生着日数の比較、マウスの血中、小腸内容物の16SrRNAを用いて腸内細菌叢の解析を行った。 結果、P.g群のマウスでは、control群のマウスと比較して皮膚移植の生着日数の延長(それぞれ11日:7日(中央値) p<0.001)を認めた。さらに拒絶後にマウス回盲部の糞便の腸内細菌叢解析を行い、P.g群のマウスの腸内細菌叢とControl群のマウスの腸内細菌叢を比較したところ、P.g群においてBacteroides門が増加しFirmicutes門が減少するという傾向を認めた。さらにP.g群において腸内細菌叢の多様性のスコアであるα-diversityの減少を(p=0.08)を認めた。このことから、P.g群のマウスの腸内細菌叢において腸管ディスバイオシスが惹起されていることが示唆された。 ii)P.g菌をマウスに6週間経口投与し移植直前にマウスの血中および脾臓内のTregを測定したところ、P.g群においてControl群と比較し、血中および脾臓のTregが増加していた(p<0.01)。このことから、歯周病菌投与が移植免疫に影響を与えうる可能性が示唆された。 i)ii)の結果を、第34回日本バイオセラピー学会および、第122回日本外科学会 ワークショップで発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
皮膚移植とフローサイトメトリーの手技を確立し、実際にマウスに歯周病菌(P.g)菌の投与を行った。その結果、歯周病菌を投与して腸内細菌叢を変化させたマウス(P.g群)では、歯周病菌を投与しないマウス(Contorol群)と比較して皮膚移植の生着日数の延長および血中および脾臓のTregが増加していた。また、腸内細菌叢解析では、P.g群においてBacteroides門が増加しFirmicutes門が減少するという傾向を認めた。さらにP.g群において腸内細菌叢の多様性のスコアであるα-diversityの減少 (p=0.08)を認めた。今までの実験で、マウスへの歯周病菌経口投与が腸管ディスバイオシスを惹起させること、また移植免疫に影響を与える可能性が示唆された。 今後は、腸内細菌叢の変化が直接または間接的に移植免疫に影響を与えるメカニズムを調べていく。 今までの結果を、第34回日本バイオセラピー学会および、第122回日本外科学会 ワークショップで発表し、今後は論文発表を行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今までの実験で、マウスへの歯周病菌経口投与が腸管ディスバイオシスを惹起させること、また移植免疫に影響を与える可能性が示唆された。今後は、腸内細菌叢の変化が直接または間接的に移植免疫に影響を与えるメカニズムを調べるため、腸管代謝物のメタボローム解析を行い、制御性T細胞(Treg)と関連があると言われている短鎖脂肪酸の解析を行う。並行して腸管膜リンパ節におけるサイトカインのRT-PCRの比較、皮膚グラフトへの影響を調べるために皮膚の免疫組織化学染色を行う予定である。 これらの結果を学会発表と論文発表を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
研究は順調に進んでいるものの、腸内細菌叢の全身の移植免疫に対する影響の解明はまだ中途の段階である。 今後、腸内細菌叢の解析や腸管代謝物の解析(メタボローム解析)などを行っていく予定で、多額の費用がかかることが予想されることから次年度使用額が生じた。
|
Research Products
(2 results)