2020 Fiscal Year Research-status Report
ヒルシュスプルング病有神経節腸管における神経及び免疫細胞の相互発生制御機構の検証
Project/Area Number |
20K17593
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
武田 昌寛 順天堂大学, 医学部, 助教 (50806164)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ヒルシュスプルング病 / 組織透明化 / 蛍光イメージング技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、発生過程における神経系と免疫系の相互ワイヤリングに着目し、ヒルシュスプルング病(以下H病)における難治性腸炎(以下H病腸炎)の病態解明を目的としている。研究の成果は、H病腸炎における病態解明及び新たな治療標的の検証を可能にするだけでなく、解剖学、発生学、免疫学の発展にも寄与するものであると考えている。 具体的な方法として、上記目的を達成するためにH病モデルマウスで最新の蛍光イメージング技術、特に、生きたままの挙動を見るためのライブイメージングと、組織深部の観察を可能にする組織透明化技術を用いて腸管の神経系、免疫系、血管系の発生過程の形態学的検証を行う。これらを実現するために①H病の腸間膜、腸管組織透明化による三次元イメージング法の構築、②腸管免疫系、神経系、血管系の発生過程の形態学的観察、③腸管免疫系と腸管神経系の発生における制御機構、因子の解明をそれぞれの年度毎の研究課題とした。 本年度は、腸管組織透明化による三次元イメージング法の構築を目的とし、SeeDB法を用いて、胎生期の増生神経分布を透明化組織イメージングにより視覚化した。組織透明化処理を施したマウス(野生型マウス、H病モデルマウス)のホールマウント標本による免疫染色でそれぞれのマウスの直腸肛門部領域の観察を施行。野生型マウスにおいては、腸管壁内神経系の規則正しい配列が観察されたのに対し、H病モデルマウスにおいては、壁内神経の不規則な配列及び、太く明瞭に発達した外来神経系が観察された。また腸管神経系の観察という点において、介在ニューロンと投射ニューロンの概念を腸管神経系にも応用し、両マウスでの検証を試みたが、現時点で有意な差は観察されていない。 次年度は、この三次元イメージングを利用し、本研究テーマである腸管免疫系の観察を実際に行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、H病腸炎の病態解明を目的とし、H病モデルマウスを使用し、腸管神経系と免疫系の発生過程における制御機構の解明を行うことを目的としている。 本年度は、H病モデルマウスで最新の蛍光イメージング技術、特に、組織深部の観察を可能にする組織透明化技術を用いて腸管の発生過程の形態学的観察を行った。H病のモデルマウスはRet遺伝子ノックアウトマウスに比し、長期生存例の観察も可能であるという点で、H病原因遺伝子であるエンドセリンレセプターBノックアウトマウスを用いた。また組織の透明化法としては、組織の伸縮がなく、蛍光タンパクが褪色しない、操作の簡便さに重点をおき、SeeDB法を当初の予定通り選択した。SeeDB法では透明化が不十分、対象細胞の観察が困難と判断された際は、より高度な透明化で1細胞レベルの高い解像度での観察を可能にするCUBIC法への変更を予定していたが、現時点ではSeeDB法で今後の研究を行っていく予定である。免疫系組織の観察時に、SeeDB法では不十分な条件であると判断した際は、CUBIC法の使用も再度検証する予定である。 今後の研究予定は、この組織透明化技術を使用し、腸管免疫系-神経系の発生メカニズムの解明をより具体的に検証していくことであり、当初の研究計画通りに進行していると考えられる。また用いる顕微鏡は共焦点顕微鏡を使用し、2mm程度の深度でタイリングイメージングによる広い視野での発生中の腸管神経、免疫細胞の位置関係の評価を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で、当初の予定通りの研究計画が進んでいると考えられる。令和3年度の研究予定は、上記に示した腸管組織透明化による三次元イメージング法の使用により、実際に本研究のテーマとなる腸管免疫系、神経系、血管系の発生過程の形態学的観察を行うことである。 具体的にはパイエル板の形成過程を示すとされるVCAM-1、IL-7Rα、CD45Rを免疫染色で経時的に評価していく。これら3種類の指標は、それぞれがパイエル版の発生における3段階の内の1つのマーカーであり、腸管免疫の発生指標として有用である。同時に、腸管神経系の胎生期発生過程、胎生9日から出生後5日程度のマウス腸管神経系イメージングを試みることで、パイエル板の形成過程と基底膜における腸管神経系の軸索、細胞突起の伸長、網目状構造の形成過程の経時的な配置関係を形態分析する。また、それらに並行し、血管内皮のマーカーとしてCD31を使用し、既に神経系とのワイヤリングが示されている血管系の発生との配置関係も経時的に追跡する。これらを共焦点レーザー顕微鏡で撮影した断層像を三次元画像処理ソフトImaris(bitplane社)にて立体構築処理、形態分析を行う。その後、来年度の研究予定である、腸管免疫系と腸管神経系の発生における制御機構、因子の解明へと研究を推進していく。
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Causes of Carryover |
本年度は概ね計画通りの助成金使用を行っている。 翌年度は、腸管免疫系の免疫染色試薬を中心に、予定通り助成金を使用していく予定である。
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