2022 Fiscal Year Research-status Report
ヒルシュスプルング病有神経節腸管における神経及び免疫細胞の相互発生制御機構の検証
Project/Area Number |
20K17593
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
武田 昌寛 順天堂大学, 医学部, 准教授 (50806164)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ヒルシュスプルング病 / 発生 / 神経 / 免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.腸管免疫系、神経系の発生過程における形態学的観察 初年度及び次年度で確立した腸管組織透明化による三次元イメージング法、特にパイエル板の透明化ホールマウント検体を用い、ヒルシュスプルング病(H病)モデルマウスにおける腸管神経系及び免疫系の経時的な発生過程の検証を行った。高解像度レーザー顕微鏡を用い、出生7日のコントロールマウスにおけるパイエル板内におけるPSA-NCAM(未熟神経マーカー)陽性の微細な神経線維の観察に成功した。しかしパイエル板内におけるTuj1(成熟神経マーカー)陽性の神経線維の観察が困難であったこと、またH病モデルマウスにおけるパイエル板はコントロールマウスのそれよりも更に小さく、再現性のある神経線維の観察も困難であったことより、パイエル板における神経線維と免疫細胞の発生過程における相互関係を形態学的に観察することは困難であると結論付けた。 H病難治性腸炎において、腸管免疫応答の活性化に重要な役割をもつとされるM細胞に着目して上記三次元イメージング解析でコントロールマウスとH病モデルマウスの比較検証を行うことを試みた。出生24日のマウスを使用しGP2(成熟M細胞マーカー)及びSpiBによる免疫染色を施行。切片における評価ではH病モデルマウスのGP2陽性M細胞が少ない傾向であった。しかし三次元イメージングにより濾胞随伴上皮層におけるM細胞の観察を試みるも、コントロールマウス、H病モデルマウスともに極僅かの細胞しか観察されず、また再現性の確立も困難であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
初年度において確立した腸管組織透明化による三次元イメージング法を用い、H病モデルマウスにおけるパイエル板の観察を行うことに成功した。また本観察法における胎児期のパイエル板の経時的な発生過程の観察は、組織のサイズ及び透明化という手法との相性も悪く、またH病モデルマウスにおいては更にパイエル板のサイズも小さいことが判明し、当初の予定に準じた評価方法(H病モデルマウスにおける腸管神経系と腸管免疫系の発生過程を経時的に追い、両者の発生制御機構及び形態的変化を形態学的手法により評価)は困難であると結論付けた。 また出生後のパイエル板の発達はコントロールマウス、H病モデルマウス共に著しく、その経時的な変化を病原微生物の門戸であるM細胞に着目し評価を行う方針とした。特に三次元イメージング解析法はM細胞があるべき濾胞随伴上皮層に焦点をあてることが可能であり、本検証の評価法として妥当性があると考えられた。しかし、切片検体にてM細胞の免疫染色による評価は可能であったものの、三次元イメージング解析による検証ではM細胞の数が極めて少なく、また再現性のある評価法の確立が困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初想定していた形態学的手法による腸管免疫及び神経系の発生過程の観察は困難であると結論付けた。今後、フローサイトメトリーなどの異なる手法による評価方法が本研究を進めていく上では最も望ましいと考えられる。 またM細胞に関しては、H病関連難治性腸炎における重要な因子であると想定され、今後もその役割を研究対象として進めていくべきと考えられる。具体的には成熟M細胞マーカーであるGP2に加え、未熟M細胞マーカーであるSpiBによる評価、また本件に関してもフローサイトメトリーによる細胞集団の解析が有効と考えられる。対象もパイエル板がしっかりと発達した出生4~5週のコントロールマウス及びH病モデルマウスを使用し、その後、対象年齢を下げていくことで、出生後のM細胞の発生過程の経時的変化が評価可能になると考えられる。
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Causes of Carryover |
本年度までの研究計画にずれが生じたことで次年度使用額が生じた。
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