2021 Fiscal Year Research-status Report
cGAS-STING経路の活性化と抗腫瘍免疫機構に対する影響の検討
Project/Area Number |
20K17606
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
新部 彩乃 (樺嶋) 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (20445448)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | cGAS / 癌間質 / 腫瘍免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は膵臓癌におけるcGAS-STINGシグナルの活性化レベルについて解析をするとともに、その活性化による抗腫瘍効果増強を狙うことを目的とした新規の治療戦略を開拓することを目的とし、遂行中である。 本年度は昨年度に引き続き、膵臓癌臨床検体での免疫細胞浸潤レベルについて詳細に解析を進めた。昨年度までの検討で、癌細胞側のcGAS-STINGシグナルの活性に応じてCD8陽性細胞の局所への浸潤が変化することは見出していたが、その他腫瘍免疫に関与する他の種々の免疫細胞についても免疫組織化学染色またはホルマリン固定パラフィン切片(FFPE)由来のRNAを用いてqPCRでその発現レベルの検討を行った。その結果、CD8陽性細胞や樹状細胞、NK細胞など腫瘍免疫を促進する免疫細胞の浸潤レベルはcGAS-STINGシグナル活性化群で高く、cGAS-STINGシグナルの活性が膵臓癌において腫瘍免疫の活性化に寄与していることが示唆された。また、この結果は免疫組織化学染色を用いた評価と同傾向を示しており、今後FFPE由来サンプルを用いた様々な遺伝子の発現解析に用いることが可能になる。 膵臓癌組織ではしばしば豊富な腫瘍間質を認めるが、それらから分泌されるサイトカインにより直接的にあるいは間接的に癌細胞周囲の腫瘍免疫環境を抑制することが知られている。実際にcGAS-STINGシグナル活性化群と非活性化群とで癌細胞に隣接する間質部を観察したところ、cGAS-STINGシグナル活性化群では間質内部にまで免疫細胞の浸潤が多数見られたが、非活性化群においては少数であった。シグナル活性化群と非活性化群間で癌間質量レベルの比較を行ったが、有意差は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
cGAS-STINGシグナルと癌間質の関連に関して、当初計画していた内容とは別の新たな知見を得ることができた。ここまでの成果を論文にまとめられる目途がつけられつつあるため。
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Strategy for Future Research Activity |
cGAS-STINGシグナル活性化群と非活性化群とを比較して免疫細胞の浸潤レベルを観察・比較する中で、シグナルの活性化の有無と、間質をまたぐ免疫細胞の浸潤レベルに相関があることを見出した。このことは腫瘍におけるcGAS-STINGのシグナル活性化レベルが実際の免疫細胞の癌細胞への浸潤に深く関与していることが示唆される。膵臓癌ではその豊富な間質がしばしば様々な薬物治療などの障壁になることが示唆されているが、膵癌組織においてシグナル活性化レベルを上げることが免疫チェックポイント阻害剤などの奏功性を高めることになる可能性がある。これまでの検討から、cGAS-STINGシグナル活性化の有無は間質の性質に影響を与えている可能性が示唆される。今後はシグナルの有無と間質の性質に関しての検討を中心に進め、論文作成に向けて取り組む。
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Causes of Carryover |
本年度購入予定としていた物品が、世界的な在庫不足により納品未定となり、年度内の納品が困難となった。この物品は新年度早々に再発注をし、来年度分として計上予定である。
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