2022 Fiscal Year Research-status Report
cGAS-STING経路の活性化と抗腫瘍免疫機構に対する影響の検討
Project/Area Number |
20K17606
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
新部 彩乃 (樺嶋彩乃) 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 訪問研究員 (20445448)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | cGAS-STING / 癌免疫微小環境 / 癌間質細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は膵臓癌におけるcGAS-STINGシグナルの活性化レベルについて解析をするとともに、その活性化による抗腫瘍効果の増強を狙うことを目的とした新規の治療戦略を開拓することを目的とし、遂行中である。 昨年度までの検討で、膵臓癌組織検体中のcGAS-STINGシグナル活性化の有無により癌細胞を取り囲む癌間質組織から癌組織内部にかけて浸潤する細胞傷害性T細胞の数が異なることを見出しており、この結果はcGAS-STINGシグナルがサイトカイン産生促進による免疫細胞の局所への誘導のみならず、癌間質細胞にも何らかの影響を与えている可能性を示唆するものであった。腫瘍組織の線維化レベルに依存するかを検証するために癌間質量の定量を行ったが癌間質量と浸潤免疫細胞数に相関は認められなかったため、間質の性質に違いがあると考え、癌組織中の間質細胞の不均一性に着目し検討を進めた。 近年の研究により癌進展抑制性あるいは癌進展促進性を有する癌間質細胞の特徴が明らかになりつつあるが、本研究においても各々の特徴的マーカーの発現について検討を行った結果、癌抑制性の間質細胞マーカーの発現がcGAS-STINGシグナル活性化組織中で高いことを見出した。また、Transwellチャンバーを用いた癌-間質細胞-免疫細胞の共培養系を用いた検討において、cGAS-STINGシグナルの活性化とともに癌間質細胞中の癌抑制性間質マーカーの発現が維持されるとともに、癌間質細胞をまたぐ免疫細胞の癌細胞への浸潤誘導が引き起こされることを見出した。ここまでの結果をまとめ、英科学雑誌Scientific Reportsに論文投稿・受理された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
cGAS-STINGシグナルと癌間質の関連に関して論文発表が達成されただけでなく、当初計画していた内容とは別の新たな知見を得ることができ、本研究の更なる発展が期待できるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
膵臓癌では組織中の豊富な間質がしばしば様々な薬物治療などの障壁になることが示唆されているが、膵癌組織におけるシグナル活性化レベルを上げることが免疫チェックポイント阻害剤などの奏功性を高めることに繋がる可能性がある。これまでの検討から、cGAS-STINGシグナル活性化の有無は間質の性質とそれに基づく免疫細胞の癌細胞への浸潤に大きな影響を与えている可能性が示されている。今後は癌間質の性質の詳細な解析とcGAS-STINGシグナル増強に焦点を当て、癌免疫微小環境中の癌-間質-免疫細胞の相互作用についてより深く追究していく。
|
Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の影響などにより、動物実験系に関し1年目から当初の本研究課題計画からの変更を余儀なくされていたため計画がずれ込み、次年度使用額が生じた。本年度までの研究成果により論文作成が達成できたが、同時にこれまでの成果より新たに追究すべき課題も見出すことができている。次年度ではその解明に向け課題を継続していく予定としている。
|