2020 Fiscal Year Research-status Report
NADPH oxidase 5とROSの細胞内輸送による大腸癌進展機序の解明
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20K17609
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
清水 浩紀 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00756827)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | NADPH Oxidase 5 / 細胞増殖能 / 細胞浸潤能 / mRNAマイクロアレイ / ILK signaling pathway |
Outline of Annual Research Achievements |
1,大腸癌細胞株におけるNADPH Oxidase 5(NOX5)発現、機能解析。ヒト大腸癌細胞株10種を使用し、NOX5のタンパクならびにmRNA発現レベルを確認し、高発現株のHCT116、中等度発現株のSW48を以後の機能解析に用いた。NOX5 siRNAを用いたトランスフェクションにて、両細胞株においてタンパク、mRNAレベルでのノックダウンをWestern blot、qRT-PCRにて確認した。NOX5高発現株であるHCT116においてはノックダウンにて細胞増殖、細胞周期が有意に抑制されたが、NOX5中等度発現株であるSW48では有意変化を認めなかった。遊走・浸潤能は両細胞株において有意にノックダウンにより有意に抑制された。 2,NOX5高発現株であるHCT116細胞を用いてNOX5 siRNAによるトランスフェクションを行い、遺伝子発現プロファイル変化をマイクロアレイ法にて網羅的に解析した(IPA softwareを使用)。遺伝子がノックダウンにより1.4倍以上変化した約4000遺伝子を解析した結果、ILK signaling pathwayに関わる遺伝子発現の多くが有意に変化していることが判明した。そのいくつかの遺伝子(ITGA2,GSK3B,JUN,FOS)を抽出してqRT-PCRによるバリデーションを行い、マイクロアレイ結果と同様であることを確認した。さらに細胞遊走・浸潤能との関連性について報告があるplasminogen activator urokinase (PLAU)もマイクロアレイにて有意な変化(ノックダウンにて-4.61倍)を示しており、バリデーションにて同様の結果を確認した。 以上について纏めた結果を論文化してInternational Journal of Oncologyに投稿した。現在リバイス対応中であり、近日に再投稿を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
応募時に記載した令和2年度の研究実施予定の大部分を終えることができた。 我々はこれまでに大腸癌手術症例の組織標本を用いたNOX5の免疫染色を行った結果、 NOX5高発現例は予後不良であることを報告してきた(Anticancer Res. 2019;39,4405-10.)。今回の細胞増殖、細胞周期、細胞遊走・浸潤能がNOX5 siRNAによるトランスフェクションにて抑制されたという結果は、ヒト組織標本を用いた先の報告を支持するものであった。 また、NOX5高発現株のHCT116細胞株を用いたmRNAマイクロアレイ解析の結果、NOX5発現変化によりILK signaling pathwayに関与する多くの遺伝子発現に有意変化あることを見出した。qRT-PCRによるバリデーションにてマイクロアレイ結果の裏付けをとることも出来た。現在、タンパクレベルでも同様の変化を認めるかWestern blotにて検討している。今後、そのメカニズム解明のためにさらなる実験解析が必要であるが、検討するべき対象が抽出できたことは大きな成果と言える。 さらに、これまでの結果を国内学会(日本癌学会総会)にて発表した上で論文として纏め、International Journal of Oncologyに投稿してリバイス対応中という段階まで至ることができた。近日に再投稿予定としている。 現在のコロナ禍により実験物品や抗体などの確保に時間を要し、我々の研究進行にも少なからず影響があったことも考慮すると、現在まで進捗状況はおおむね順調だと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
応募時に記載した実験予定をベースとしてさらにNOX5の大腸癌における癌進展メカニズムの解析を進めていきたいと考えている。令和3年度に予定している具体的な実験計画は以下の通りである。 ①NOX5低発現株を用い、NOX5発現ベクターのトランスフェクションにより細胞増殖、細胞周期、細胞遊走・浸潤能が変化することを検討する。 ②NOX5 siRNAもしくは発現ベクターによるトランスフェクションにより、NOXが関与する細胞外ならびに細胞内ROS(H2O2)値の変化を比較検討する。また、ionomycinやPMA刺激によるH2O2亢進が細胞増殖、細胞周期、細胞遊走・浸潤能にどのような影響があるのかを検討する。さらに先のmRNAマイクロアレイ結果により抽出されたILK signaling pathwayへのROSの影響について、pathway内の遺伝子ならびにタンパク発現レベルの変化をqRT-PCRやwestern blotにより検討する。 ③マウスの皮下腫瘍モデルを用い、NOX5 siRNAによるトランスフェクションにてin vivoにおける腫瘍進展抑制の効果を検証する。腫瘍数や重量をコントロール群と比較検討し、さらに病理組織学的手法にて血管新生や間質組織増生の変化についても検討する。 最終的にはこれらの結果を学会発表ならびに新たに論文化し投稿発表することを目標としている。
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