2023 Fiscal Year Annual Research Report
3D肛門形態・機能解析を用いた直腸癌術後の排便機能障害発生メカニズムの解明
Project/Area Number |
20K17612
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡田 倫明 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (40848206)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 肛門括約筋 / 排便機能 / 低位前方切除後症候群 / AI / 3次元構築 |
Outline of Annual Research Achievements |
直腸癌手術後に起こる排便機能障害に関する研究を行ってきた。排便機能にかかわることが想定される肛門周囲の筋肉や臓器の定量評価を行うために、骨盤MRI画像からAI技術を用いて骨盤周囲筋肉を3次元構築し解析できるソフトウェアの開発を行ってきた。MRI画像から11個の臓器(内外肛門括約筋、肛門挙筋、浅会陰横筋、尿道括約筋、尿道、前立腺など)の臓器抽出を行い、トレーニングセットとバリデーションセットにわけ、ディプラーニングをベースとしたAI技術を用いて自動抽出モデルを作成した。一人のMRI画像か抽出するのに手作業では8時間近くかかっていたが、本モデルにより5分程度で作成することが可能になった。また、抽出精度(Dice係数)では、恥骨直腸筋や浅会陰横筋などの棒状で平面構造の臓器は0.449-0.765の精度であったが、前立腺や内肛門括約筋などの塊状で球体構造の臓器では0.9前後の精度であり、十分な抽出精度を達成できたと考える。境界の不明瞭な肛門周囲の筋肉を自動抽出する技術は前例がなく、肛門周囲の筋肉を定量評価できるツールとして意義のある成果である。 直腸癌患者の術後6, 12, 24ヶ月の排便機能のアンケート調査においては、術後6ヶ月が最も悪化しており、術後12, 24ヶ月と徐々に改善していた。腫瘍位置が低い症例では、便失禁の頻度が高く、直腸切離位置が低いと排便機能を悪化させることが示唆された。また、先行研究から術前放射線化学療法は排便機能を悪化することが知られているが、本研究では術前化学療法は術後排便機能の増悪因子でないことがわかり、今後は直腸癌の根治性と機能温存の両立を担う術前治療の選択の一つとして期待される。肛門内圧測定はCOVID-19パンデミックの影響で体液や汚物を扱う検査の制限を受け、症例登録が遅れており今後も症例集積を重ねていく予定である。
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