2020 Fiscal Year Research-status Report
Neutrophil extracellular trap and immune response in gastrointestinal tumor
Project/Area Number |
20K17629
|
Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
佐田友 藍 自治医科大学, 医学部, 助教 (40528585)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 好中球細胞外トラップ / 免疫応答 / 腫瘍浸潤リンパ球 / 腫瘍関連マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
がん微小環境に存在する好中球細胞外トラップ(NETs)が腫瘍浸潤マクロファージ(TAM)やエフェクターT細胞(CTL)を介してがんの進行に如何なる影響を与えているか?を明らかにする目的で以下の知見を得た。 (1) 健常人から全血を採取後にデキストランを用いた濃度勾配比重遠心分離法で好中球を分離し、PMA 100nMの濃度で15分刺激、大量の溶媒でPMAを除去した後、さらに4時間培養してNETsを誘導する。CD3抗体とIL-2で活性化したTリンパ球をダブルチャンバーの上層に、下層にCXCL-11を加え、2時間後に下層へ遊走したリンパ球を測定する実験系にNETsを添加すると、T細胞のケモタキシスはほぼ完全に抑制された。また、活性化T細胞のrandom migrationをtimelapse動画で解析する実験系でも、PMA刺激好中球による同様の抑制が観察された。しかし、この抑制現象は、DNAse1によるNETの分解でも変わらず、超遠心でNET成分を除去しても観察されることから、NET以外の活性化好中球由来の因子によるものと考えられた。 (2) Western blotting法にてPMA刺激好中球の上清中にはCXCL-11を効果的に分解する因子が含まれていることが判明した。 (3)胃癌、大腸癌の切除標本にて、CD66b抗体、シトルリン化ヒストン(Cit-H3)抗体を用いて、好中球とNETを起こしている好中球を免疫染色で検出することに成功した。大腸癌においては、Cit-H3陽性好中球の頻度が多いほど、浸潤したCD8(+)T細胞の割合が少ない傾向が認められた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
好中球を PMA で刺激して得られた上清が、活性化Tリンパ球の遊走、ケモタキシスを強く抑制する現象が確認できた。しかし、この抑制現象は予想とは異なり、NET以外の成分が関与している可能性が高く、今後の検討課題とする。ヒト癌の切除標本にて、シトルリン化ヒストンH3陽性のNETを起こしている好中球を免疫染色で検出することに成功、大腸癌においては、CD8(+)T細胞の浸潤度と相関する傾向を認められた。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1) T細胞運動抑制因子の同定:好中球を PMA で刺激して得られた上清を超遠心でNETを除去した成分が活性化T細胞のケモタキシスを抑制する実験系で、加熱処理、neutrophil elastase (NE), pan-serineprotease inhibitor(PMSF), ATP, adenosineなどの物質を添加し、抑制現象の変化を検討する。また、rho, racなどの運動関連分子の変化をwestern blotにて検討する。 (2) NETのマクロファージ分化への影響の検討:健常人末梢血好中球をPMA で刺激して得られたNETを同じドナー由来のCD14(+)単球を3~7日間培養し、樹状細胞・M1, M2マクロファージへの分化を特異的表面抗原に対するモノクロナル抗体で染色し、flowcytometryで検討する。M1マーカーには、HLA-DR, CD80, CD83, CD86、M2マーカーにはCD163, CD206を用い、CCR2、CCR7などのケモカイン受容体、免疫チェックポイント分子PD-L1、L2も検討に含める。また、培養上清をストックし、マルチプレックス定量抗体アレイを用いて、それぞれの細胞のサイトカイン産生能を明らかにする。さらに、ケモカイン、CCL-2に対する遊走能をダブルチャンバーを用いたケモタキシスアッセイで検討する。 (3)より多数の胃癌・大腸癌切除標本におけるNETsの定量と臨床病理学的因子との相関性、CD4,CD8, CD68, CD163に対する抗体でも染色し、NETsとT細胞やM2マクロファージの浸潤様式との関連性を明らかにする。 (4) YTN16にPMA刺激でNETsを起こさせた好中球を混合しC57BL6マウス皮下に接種し、翌日よりDNAse (2000u/mouse)を隔日ごとに腹腔内投与し、腫瘍の成長速度を検討する。
|
Causes of Carryover |
おおむね計画通り使用しているが、遊走実験を行うダブルチャンバー用ディッシュがコロナ禍で入手できず、予定していた遊走実験の実験回数が減り、20万あまりの余剰金がでた。しかし、予定していた成果は得られており、未使用額については、2021年度物品費として使用予定である。
|
Research Products
(3 results)
-
[Journal Article] NLRP3 Inflammasome Activation in Lung Vascular Endothelial Cells Contributes to Intestinal Ischemia/Reperfusion-Induced Acute Lung Injury2020
Author(s)
H. Ito, H. Kimura, T. Karasawa, S. Hisata, A. Sadatomo, Y. Inoue, N. Yamada, E. Aizawa, E. Hishida, R. Kamata, T. Komada, S. Watanabe, T. Kasahara, T. Suzuki, H. Horie, J. Kitayama, N. Sata, K. Yamaji-Kegan, M. Takahashi.
-
Journal Title
J Immunol
Volume: 205(5)
Pages: 1393-1405
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
[Presentation] 当院における内視鏡摘除後のT1直腸癌追加腸切除適応症例についての検討2020
Author(s)
巷野 佳彦, 堀江 久永, 津久井 秀則, 本間 祐子, 熊谷 祐子, 東條 峰之, 佐田友 藍, 清水 徹一郎, 直井 大志, 田原 真紀子, 伊藤 誉, 井上 賢之, 鯉沼 広治, 佐久間 康成, 細谷 好則, 味村 俊樹, 北山 丈二, 佐田 尚宏
Organizer
日本大腸肛門病学会雑誌
-