2020 Fiscal Year Research-status Report
障害肝における肝障害後肝再生機構の解明と再生促進治療開発:肝切除術の適応拡大へ
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20K17639
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小西 孝宜 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (80865882)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 肝線維化 / 肝再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
障害肝における急性肝障害後の肝再生機構を解明すべく、肝線維化マウスモデルに肝阻血再灌流障害を惹起させ、障害肝特有の肝再生に関する解析を実施した。既に肝線維化マウスでは障害部の貪食が早く、肝組織の再構築が促進されるという結果を得ていたため、その機序に関わる因子を以下のごとく検討した。 (1)肝再生と肝修復には肝実質細胞の他に非実質細胞が重要な役割を果たす。肝線維化マウスモデルでは肝阻血再灌流障害後の肝再生においてmacrophageの集積とductular reactionが亢進することを既に明らかにしており、さらにhepatic stellate cell(HSC)やneutrophilの集積を検討した。desminの免疫組織染色で、線維化肝では元来bridging fibrosis沿いにHSCが存在し、肝再生時にHSCが肝障害部に広く集積することが明らかとなった。Ly6Gの免疫組織染色では、肝線維化マウスモデルに特徴的なneutrophilの集積は認めなかった。またCD31の免疫組織染色では、肝線維化マウスモデルで肝再生時の障害部におけるmicrovessel densityが有意に高かった。 (2)障害肝おける特有の微小環境が肝再生に与える影響に着目し、肝線維化マウスモデルの肝阻血再灌流障害後の肝内サイトカインレベルをPCR法にて検討した。障害後48時間のTNFaとIL-1bとIL-6は肝線維化モデルで正常肝モデルと比較し有意に低かったが、IL-4とL-10は有意差を認めなかった。 以上の結果より、線維化を伴う肝臓では、炎症性サイトカインが肝再生初期に低値となっており、肝再生時には組織修復に関わる細胞の集積亢進や血管新生が強く、結果として肝再生が促進される可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肝線維化マウスモデルでは肝阻血再灌流障害後の肝再生が促進されるという既存データのもと、線維化を伴う肝臓における非肝実質細胞集積と微小環境の解析を終了した。障害肝特有の炎症細胞集積や創傷治癒反応の結果が得られており、概ね順調に進んでいる。それらの因子がどのように肝再生に影響を及ぼすかが重要であり、そのメカニズムの検討は進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
線維化を伴う肝臓における急性肝障害後の肝再生機構に関する検討を継続する。肝線維化マウスモデルへChrodronate liposomeを投与することで、線維化肝におけるマクロファージ集積亢進の肝再生への影響を検討する。特にマクロファージが及ぼす肝細胞増殖・肝星細胞集積・血管新生・周囲環境変化等に関して解析する。その後は、脂肪肝マウス・脂肪肝炎マウスモデルを構築し、脂肪肝・脂肪肝炎における急性肝障害後の肝再生機構の解明ならびに肝再生促進治療を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度の研究においては、以前施行したin vivoの実験で採取済みの検体を用いた解析が中心であったため、マウスの新規購入の必要性がなかった。またコロナウイルスの影響で学会現地参加が見送られため、次年度使用額が生じた。これら次年度使用額ならびに翌年度分として請求した助成金はマウス購入や抗体・実験試薬購入費用として使用する予定である。
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Research Products
(7 results)