2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K17652
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
植嶋 千尋 鳥取大学, 医学部附属病院, 医員 (70774107)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | IgA産生形質細胞 / がん特異的抗体 / 免疫活性化 / 胃癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「胃癌におけるIgA産生細胞は胃癌の増殖・進展を抑制する作用があることを明らかにする」ことである。 がん細胞の免疫機構からの逃避システムには、がん細胞からの免疫抑制系(PD-1/PD-L1、TGF-β)の活性化があり、腸管由来のIgA陽性のIL-10やPD-L1を産生する制御性B細胞あるいはプラズマ細胞による免疫抑制システムの存在も報告されている。また、抗体可変領域のVDJ再配列分析において、オリゴクローナリティが予後に関わるとの報告もある。我々は胃癌におけるIgA産生細胞が癌の増殖・進展を抑制する可能性について注目した。 これまでの研究成果として、胃癌手術の切除標本を用いたIgAの免疫染色を行い、癌部と非癌部では癌部で有意にIgAが減少すること、癌部でのIgAが少ないと予後不良であることを見出した。さらに、癌部及び非癌部での形質細胞全体の分布についても確認するためCD138の免疫染色も行い、癌部と非癌部で形質細胞全体の数に差がないことを確認し、癌部ではVDJの再配列によりIgAへのクラススイッチ が促進されている可能性を示した。また、胃癌手術の切除検体を用いたフラグメント解析を数例行い、胃癌においては①腫瘍特異抗体なし、②腫瘍特異的IgG抗体なし、③腫瘍特異的IgG・IgA抗体あり、の3パターンが存在することを発見し、胃癌においてはIgAへのクラススイッチが促進され、IgGのみならずIgAの腫瘍特異的抗体が増加することによる腫瘍抑制性に作用するとの仮説を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の該当年度における実験計画は、(1)胃癌組織における特異的抗体の解析(定性的・定量的)を行い、(2)胃癌組織における形質細胞とIgA・IgG産生細胞の分布解析、(3)抗体産生に関連するケモカイン・サイトカインの定量的解析を進めることであった。(1)については前述の通り、定性的解析は行うことができ、症例数を増やして検討を行った。定量的解析については当初定性を目的としてサンプル採取を行っており、難渋したが定量化は可能であった。(2)については免疫染色の症例を増やし、さらに蛍光免疫染色で局在も確認できた。(3)についてはリアルタイムPCRで解析を行う予定であったが、リアルタイムでの解析は困難であり、フローサイトメトリーによる解析に変更し、現在解析中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず、フローサイトメトリーによる解析を終了させ、抗体産生に関連するケモカイン・サイトカインの働きを検討する。次に当初の予定通りマウスを用いた動物実験で前向きな検討を行う。 特異的抗体の解析について、DNAシーケンス解析サービスを予定していたが当初予定していたものは費用がかかり、別社の解析サービスを検討中である。いずれかの方法で解析は行う予定としている。
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Causes of Carryover |
研究はやや遅れているが、概ね予定通り進んでいる。 繰り越し費用の多くは外注の解析サービスに使用予定であるが、前年度会計に間に合わなかったため繰り越し額が発生した。
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