2020 Fiscal Year Research-status Report
血管新生のheterogeneityに着目した血行性臓器特異的転移形成の機序解明
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20K17657
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中山 宏道 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (80866773)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 血管新生 / sprouting angiogenesis / vasculogenesis / 膵癌 / 同種骨髄移植KPCマウス / CD31 / VEGFR |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、膵癌における血管新生のheterogeneityに着目し、膵癌の浸潤・転移への関与を明らかにし、臓器特異的転移形成の機序や予後との関連を解明しようと考えた。膵癌においてすでに報告のある3タイプのうち、発生機序の違うsprouting angiogenesisとvasculogenesisの2種類に着目して、これらを比較、検討した。まず、血管内皮細胞のマーカーであるCD31, VEGFR2の膵癌における発現が、予後と関連するかを、TCGAデータベースを用いて検証したが、明らかな有意差は認められなかった。 次に、sprouting angiogenesis とvasculogenesisの2種類の血管新生の比較、検討を行うため、まず両者を区別する方法として、vasculogenesisにおいては骨髄由来内皮前駆細胞が仲介していることに注目した。そこで膵癌自然発癌モデル(LSL-KrasG12D/+;LSL-Trp53R172H/+;Pdx-Cre: KPC)マウスに、GFP陽性骨髄細胞を移植し、この同種移植KPCモデルの膵癌組織を解析した。FCMによる解析では、末梢血、骨髄、膵組織、リンパ球のそれぞれにGFP陽性細胞が生着していることを確認した。その内、膵癌組織中には、全細胞の内、約10%がGFP陽性であった。さらに、上記の同種骨髄移植KPCマウスの膵癌組織の免疫染色を行って膵癌組織中の血管新生を検討したところ、GFP陽性細胞は全細胞の約4%であり、血管内皮細胞のマーカーであるCD31陽性細胞は約8%であった。GFP陽性細胞(骨髄由来細胞)の内、内皮前駆細胞の割合はさらに低いと考えられ、膵癌自然発癌マウスにおいては、vasculogenesisタイプよりもsproutingタイプによる血管新生の方が多いことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、sprouting angiogenesis とvasculogenesisの2種類の血管新生の比較、検討を行うため、まず両者を区別する方法として、vasculogenesisにおいては骨髄由来内皮前駆細胞が仲介していることに注目し、同種骨髄移植KPCモデルを作製した。動物実験の準備(施設利用手続き、動物実験講習受講など)や、骨髄移植マウスモデルの作成などにやや時間を要したが、骨髄移植KPCマウスモデルの膵癌組織の解析をFCM、免疫染色で行うなど本研究の進捗としてはおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
同種骨髄移植KPCマウスを用いた、膵癌組織の解析が可能となったため、今後はFACSを用いてsprouting angiogenesis(GFP-,CD31+) とvasculogenesis(GFP+,CD31+)の2種類の血管内皮細胞をsortingで分離し、発現解析により、各分画における特異的マーカーを絞り込み、sprouting angiogenesisとvasculogenesisの2つのタイプの血管新生を区別するためのマーカーを探索する。また、網羅的発現解析からそれぞれの血管新生に関わる機能的な分子、シグナルpathwayを絞り込み、タイプ特異的な血管新生抑制剤(抗体/ 化合物)の探索を行う。さらに、Sprouting angiogenesisとvasculogenesisのタイプごとの浸潤・転移機能の検討のため、膵癌細胞と両者の血管内皮細胞との共培養実験で癌細胞の浸潤能、遊走能などの変化を評価する予定である。膵癌の悪性度を高めるタイプの血管新生を直接的に、もしくは微小環境が産生する因子を用いて間接的に制御することで、癌の浸潤/ 転移を抑制する新規治療法の開発も目指す。
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Causes of Carryover |
研究計画はおおむね順調に進展しており、資金を有効に使用できたため。 次年度は抗体などの研究用試薬、受託解析等に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)