2020 Fiscal Year Research-status Report
癌幹細胞に対するカルシウム輸送体制御による低浸透圧細胞破壊治療法の開発
Project/Area Number |
20K17659
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
竹本 健一 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40826038)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 大腸癌 / 癌幹細胞 / イオンチャネル / カルシウムイオン / 低浸透圧刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず大腸癌幹細胞株の樹立と遺伝子解析を優先し基礎実験を進めた.本研究当初の予定では.CD44.CD133.LGR5をマーカーとして癌幹細胞を樹立する予定であったが.実験過程で再現性が得られなかった.そこで癌幹細胞マーカーとして広く報告されるALDH1を用いて大腸癌細胞株T84, HT29より癌幹細胞を分離培養したところ樹立に成功した. 次にこれら樹立癌幹細胞と元の細胞株をペアとして,マイクロアレイ法による遺伝子解析を行った.結果,両株で発現上昇がみられるVGCCは認められなかったが,T84癌幹細胞ではCACNA1D,CACNA1H, CACNA2AD1,CACNA2D3が,1.8-2.4倍程度に発現上昇しており,HT29ではCACNA1A,CACNA1I,CACNA2D4,CACNB3,CACNG4が1.6-3.2倍に上昇していた.この結果は本研究の仮説に一致し,VGCCに対する阻害剤は癌幹細胞の細胞容積調整機構を制御し,低浸透圧刺激に対する感受性を高める可能性を示唆する結果であった. そこで癌幹細胞における低浸透圧刺激に対する反応が,通常癌細胞と比較してどの様な特徴があるか評価することとした.細胞容積の測定が可能であるMultisizerを用いて,低浸透圧刺激を加えた際の細胞容積変化を両細胞株で比較したところ,癌幹細胞では低浸透圧刺激による細胞内への水流入が抑制され,低浸透性の容積増大が生じにくいという特徴がみられた.これが低浸透圧刺激に起因した殺細胞効果に与える影響を確認するため,低浸透圧刺激を加えた後に培養を行ったところ,癌幹細胞は低浸透圧刺激による殺細胞効果に対して抵抗性を有することが判明した. 今後は,低浸透圧刺激にVGCC阻害剤やsiRNA transfectrionした際の細胞実験,腹膜播種モデルを用いたin vivoでの検証を進める予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書を作成した時点では1年間の研究予定に以下の4項目を予定した。(1).ヒト大腸癌組織における癌幹細胞マーカーと Caイオン輸送体発現の相関性の検討,(2).ヒト大腸癌細胞株を用いた癌幹細胞作製と癌幹細胞におけるCa イオン輸送体発現の確認,(3).癌幹細胞における L-type VGCC の機能解析,(4).癌幹細胞における低浸透圧刺激に対する反応性の検討.これらの内、(2)は前述のごとく終了し、(1)についてはある程度の既報や、public databaseでも解析が可能であることから、必要時に追加する予定と変更した。(4)については概ね完了しており、本年度施行すべき実験内容は(3)を残すのみである。さらに予定している阻害剤を用いた細胞実験や、in vivoでの検証実験は、残る期間で十分に遂行可能であることが予想される。 上記理由により『おおむね順調にすすんでいる』と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね順調にすすんでおり、残る検証すべき課題も明確である。まずは、マイクロアレイより抽出されたVGCC遺伝子について、RT-PCR法でも発現の再現性確認を行う。次に低浸透圧刺激とVGCC阻害剤を併用した際の、細胞容積変化への影響をMultisizerで測定し、さらにはそれら刺激後の増殖アッセイを施行し、癌幹細胞に対する殺細胞効果への影響を検証する。また、VGCC阻害剤をsiRNA transfectionに置き換えた場合も同様の結果が生じるかを確認する。これらin vitroの実験で十分な検証が確認できた上で、ヌードマウスを用いた腹膜播種モデルでVGCC阻害剤を併用した低浸透圧刺激による効果を検証する。ヌードマウス内に癌細胞を注入し播種形成を促した上で、低浸透溶液とVGCC阻害剤を混和した溶液を腹腔内に注入し、腹膜播種の形成や増殖抑制効果について検証する。 これらの計画を十分に実験担当者と少なくとも1月単位でカンファレンスを行いながら、スムーズに実験検証を進め、最終的に学会報告や論文報告を目指す予定である。
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