2022 Fiscal Year Annual Research Report
癌幹細胞に対するカルシウム輸送体制御による低浸透圧細胞破壊治療法の開発
Project/Area Number |
20K17659
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
竹本 健一 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40826038)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 大腸癌 / 癌幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず大腸癌幹細胞株の樹立と遺伝子解析を優先し基礎実験を進めた.大腸癌細胞株Ht-29,T-84より癌幹細胞マーカーであるALDH1が高現する細胞をcell sorterを用いて分離し、特殊条件下で培養、T84, HT29由来の癌幹細胞株の樹立に成功した. 次にこれら樹立癌幹細胞と元の細胞株をペアとして,マイクロアレイ法による遺伝子解析を行った.結果,両株で共通して発現上昇がみられる電位依存性Caチャネル(VGCC)は認められなかったが,多数のカルシウムチャネル,輸送体が1.6-3.2倍程度に発現上昇していた.この結果は本研究の仮説に一致し,電位依存性カルシウムチャネルVGCCに対する阻害剤は癌幹細胞の細胞容積調整機構を制御し,低浸透圧刺激に対する感受性を高める可能性を示唆する結果であった.次に低浸透圧刺激に対する細胞容積の変化を評価するため、非癌幹細胞と癌幹細胞を低浸透圧溶液に曝露した際の容積の変化を電気抵抗によって細胞容積測定が可能であるMultisizerを用いて測定,さらに曝露後のviabilityについて曝露細胞を培養することで評価する再培養実験で検証した。結果として、等張液を1/2程度に希釈した低張液に曝露した際は、細胞容積のホメオスタシスであるregulatory volume decreaseが特に非癌幹細胞で観察され、一方で癌幹細胞では容積の変化がほとんど生じず水の流入が抑制されているもしくは、排出が亢進している、何れかが生じていると予想された。再培養実験でも、癌幹細胞は低浸透圧刺激に対して極めて高い生存性を示し、耐性を有することを示唆する結果であった。これに対して、様々な阻害剤を用いて低浸透圧による容積変化を評価したところ、水銀を用いた水チャネルの阻害効果が最も高く癌幹細胞の容積変化への耐性は、水チャネルの発現が強く関わっている可能性が考えらえた。カルシウム輸送体の阻害剤については検証段階だがさらなる検証を進める予定である.
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