2020 Fiscal Year Research-status Report
大腸がんの発がんリスクに関わるHLAアリルの同定と術後化学療法応答性との関連
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20K17668
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
高柳 大輔 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 特任研究員 (40595633)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 大腸がん / HLA |
Outline of Annual Research Achievements |
近年のがんゲノム解析により、HLA(Human Leukocyte Antigen)領域に位置する遺伝子に高頻度に体細胞変異や欠失が検出されていることから、発がんの機構に重要な役割を果たしていると考えられている。一方で、ヒトゲノムの中で最も多様性があるのがHLAであるが、そのHLAの多様性(胚細胞系列変異)、例えば大腸癌の発症部位や組織型に着目した解析はほとんど行われていない。 また本邦の大腸がんは死亡・罹患数ともに増加傾向で、予防や早期発見治療、新規治療標的の同定などが望まれるがん種である。最近のがんゲノム 解析などにより、腫瘍の局在:右側、左側、直腸でゲノム異常の数や種類も異なり、さらに予後や治療効果も異なることが明らかになり、発生部位により発がんメカニズムや免疫応答が異なる可能性が示唆される。また、多くのがん組織で認められるHLA領域の遺伝子変異や欠失が、発がんにおけるドライバー変異の一つとして考えられている。 本研究では、国立がん研究センター病院が中心となり収集した症例やバイオバンク・ジャパン(BBJ)やバイオサイエンスデータベースセンター(NBDC)等の公開データ(SNPチップデータや全エクソンシークエンスデータ)を利活用して、日本人HLA参照配列を用いたHLA imputationを実施し、部位別での発がんリスクとの関連を明らかにする。さらに発がんリスクに関わるHLAアリルやバリアントが、術後再発予後に関連するかもあわせて検討する。HLAアリルの機能的な意義を検討するため、大腸がん特異的なHLAリスクアリルをもつ症例由来のがん組織を用いて全エクソン・RNAシークエンスを実施し、ネオアンチゲンの推定とHLAアリルとの結合能の推定を行なう。HLAの多様性とがん部で蓄積された体細胞変異の種類との相関の有無などを検討することで、大腸がんの発症リスクに関わるHLAアリルの同定とその機能的意義を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、バイオサイエンスデータベースセンター(NBDC)等の公開データベースに登録されているSNPチップデータもしくは申請者らが既に取得しているSNPチップデータやがん組織を用いた全エクソンシークエンス(WES)、RNAシークエンスデータあわせて約13万人のゲノムデータを用いて、日本人HLA参照配列を用いたHLA imputationを実施し、部位別での発症リスクに関わるHLAアリルを同定する。 現在、約13万人の健常人/大腸がん患者のHLA imupationは完了しており、それぞれのHLAアレルとの関連解析を実施しており、概ね計画書通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
局所部位別の大腸がん発症リスクアレルを同定し、検証サンプルを用い連鎖不平衡でR2=1に近いSNPsをタイピングし、検証研究を実施する。 がんゲノム解析としては、NDBCの公開データベースや本研究で取得したゲノム解析データを用いたMutect2による変異コールを行い、vcfファイルを作成する。またFastqファイルからHLAアレルの推定を行い、vcfファイルから抽出したアミノ酸変化を伴う体細胞変異とHLAアレルとの親和性より、Neoantigenを同定する。またRNAシークエンスからの腫瘍浸潤性T細胞の推定やHLA領域のLOHを推定し、がん細胞での免疫回避メカニズムについて解明する。
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Causes of Carryover |
今年度の研究費が満額かからなかったため、次年度に繰越し使用させていただきます。
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