2020 Fiscal Year Research-status Report
細胞外マトリックス阻害による腫瘍免疫活性化を目指した新規膵癌治療戦略
Project/Area Number |
20K17672
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
青木 修一 東北大学, 大学病院, 特任助手 (30844451)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 腫瘍免疫 / 癌微小環境 / 細胞外マトリックス |
Outline of Annual Research Achievements |
膵癌は豊富な間質と癌細胞により作り出される癌微小環境こそが、癌生物像を規定し治療耐性の原因と考えられている。申請者は、HGF(hepatic growth factor)/MET signalが、癌細胞だけでなく間質の主成分である細胞外マトリックス(ECM: extracellular matrix)の活性化に重要な働きをしており、肝への生着・転移を促進することを明らかにした。近年、ECMにより作り出されるhigh stiffness環境が宿主の免疫応答の抑制をもたらすkeyと考えられ、本研究では「HGF/MET signal阻害によるECMの不活化が宿主の免疫応答を活性化させ、さらに免疫チェックポイント阻害剤の併用により免疫回避シグナルを直接遮断することで、更なる肝転移抑制効果を示す」ことを明らかにする。 当科が主任研究施設として行なった第III相試験(PREP02/JSAP05試験)により、gemcitabineとS1療法(GS療法)を用いた術前化学療法(Neoadjuvant therapy: NAT)の有効性が世界で初めて証明された。当科でNAT施行後に外科的切除を行なった症例のうち、病理学的にNATの治療効果を認めた腫瘍(Evans grade IIb以上)と治療耐性であった腫瘍(Evans grade I以下)のmRNA発現を網羅的に解析(Nanostring解析)すると、NAT不能例ではMETの高発現を認め、細胞外マトリックスであるlamininやcollagen、炎症性サイトカインであるIL1の高発現を認めた。lamininやcollagenはECMの重要な構成因子であり、癌の進展、増殖効果が報告されている。本研究では、ECMの産生にHGF/MET signalがkeyであると仮説を立てており、これらの結果は、この仮説を支持する重要な所見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は、本年度中にマウス実験まで行う予定であったが、細胞株の準備及びMETの発現が認められる細胞株の選定に時間がかかり、予定よりやや遅れている状況である。しかしながら、ようやく細胞株の選定が終了した。in vitroの実験においても条件設定が終わり、本試験に移るところである。今度スムーズに実験が進むことを期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
NAT後の膵癌切除サンプルの網羅的遺伝子解析により、NAT耐性の膵癌腫瘍にはHGF/MET signalの亢進、細胞外マトリックス(Extracellular matrix:ECM)の高発現を有意に認め、さらにMETの発現は局所の膵癌腫瘍に比べ肝転移巣に強く発現していた。これは、本研究の仮説を支持する重要な結果であった。実験に使用する細胞株が決定したために、マウス実験の準備へと移る。マウス実験では、BL6マウスを購入し、膵臓内に細胞株を注入することで同所移植モデルマウスを作成する。すでに投与予定の薬剤は準備しており、このモデルが完成すれば、マウス実験に移行する。薬剤として、当初はanti-MET antibodyとしてcapmatinibを考えている。
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Causes of Carryover |
細胞株の準備及びMETの発現が認められる細胞株の選定に時間がかかり、未だin vitroの実験を行なっている段階で、in vivoの実験に移れていない。in vitroに使う試薬などを購入したのみである。マウス購入などを当初は予定していたが、未だ購入していない段階である。実験の進行次第で今後購入する予定である。
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