2021 Fiscal Year Research-status Report
細胞外マトリックス阻害による腫瘍免疫活性化を目指した新規膵癌治療戦略
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20K17672
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
青木 修一 東北大学, 大学病院, 助教 (30844451)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | MET / Collagen XVII / 膵癌肝転移 / 治療耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
当科が主任研究施設として行なった第III相試験(PREP02/JSAP05試験)により、膵癌における術前化学療法(Neoadjuvant therapy: NAT)の有効性が世界で初めて証明された。しかし、NATによる治療効果は不均一で、NAT耐性を示す切除後の予後は不良である。そこで、NAT耐性克服を目指した次世代の新規治療法を探索している。近年の解析技術の革新により、FFPEサンプルを用いたRNA解析(nCounter Analysis)が可能となった。2007年から2018年の間、当科でupfrontもしくはNAT後に切除した膵癌308例のFFPEサンプルを用いた網羅的RNA解析を施行。NATの治療効果を認めた13例(Evans分類IIB以上)と治療耐性13例(Evans分類I以下)の計26例を比較すると、耐性群ではMET, COL17A1, LAMB2の高発現を認め、GO解析では細胞接着に関するHemidesmosome assemblyの亢進を認めた。残りの282例をvalidation cohortとして、MET発現を解析すると、治療耐性例や肝転移巣にMET高発現を認めた。生存解析において、upfront例ではMET発現による予後の差を認めず、NAT施行例では、高発現例は低発現例に比べ有意に予後不良であった(p=0.002)。次に、in vitroにおいて、spheroidを用いた三次元培養では、MET-KOにより細胞外マトリックス及び細胞間接着の低下、Gemcitabineの感受性増強をもたらし、膵癌肝転移マウスモデルでは、MET阻害剤及びGemcitabineとの併用による肝転移抑制効果を認めた。以上より、MET signalの活性化がNAT耐性をもたらし、肝転移を有意に促進する可能性が示唆された。これらの結果は、我々の仮説を支持する重要な所見であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
臨床検体を用いたmRNA網羅的解析は終了した。現在マウス同種移植モデルを用いて、MET阻害による肝転移抑制効果を検討している。MET阻害がどのようなpathwayに関与しているのか、また、どのように免疫腫瘍微小環境を変化させているのかを明らかにし、免疫療法との併存治療の可能性を探っている。 安定したマウス同種移植モデルの樹立にやや時間を要している。本研究に使用するマウスモデルは研究代表者が米国に留学中に使用したモデルであり、マウス種や細胞株は同じものを使用している。マウス実験を担当する共同研究者の細胞株注入の手技が未熟であり、正確なマウスモデルの樹立が確認されるまで手技の向上に努めている。 また、臨床検体を用いた解析によりMET以外のNAT耐性をもたらす発現として明らかとなったcollagenXVIIに注目し、Crisper技術を用いて、collagenXVIIのノックアウト細胞株の樹立に成功した。これを用いて同種移植モデルマウスを用いて、腫瘍増生の変化を観察中である。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス同種移植モデルの樹立が確実となったら、MET阻害剤と抗PD1抗体による併存治療による肝転移抑制効果を検討する。臨床検体を用いたこれまでの解析やin vitroの解析でMET阻害による転移抑制効果は明らかとなっており、マウスモデルを用いた研究でも併存治療によるさらなる効果が期待される。 また、Collagen XVII阻害による腫瘍形成能や肝転移形成能をマウス実験で検証している。Collagen XVIIは接着因子として近年注目されており、膵癌の細胞外マトリックスの増生に関与する。マウスモデルを用いたCollagen XVII阻害による腫瘍形成の差を認めており、現在、腫瘍サンプルの網羅的RNA解析を現在行っている。この結果により、CollagenXVIIがどのような機序で肝転移形成に関与しているか、どのようにMET阻害と関与するか、さらに、免疫微小環境の変化にどのように関与するかを明らかにする。それにより、NAT耐性をもたらすメカニズムを統合的に明らかにでき、耐性克服のための新規治療の開発につながる。
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Causes of Carryover |
安定したマウス同種移植モデルの樹立にやや時間を要している。本研究に使用するマウスモデルは研究代表者が米国に留学中に使用したモデルであり、マウス種や細胞株は同じものを使用している。マウス実験を担当する共同研究者の細胞株注入の手技が未熟であり、正確なマウスモデルの樹立が確認されるまで手技の向上に努めている。安定したマウスモデルが樹立されたら、マウスを大量に購入し実験を行う予定である。 マウス実験が軌道に乗れば、CollagenXVIIのノックアウトマウス腫瘍、MET阻害剤及び抗PD1抗体併用療法によるマウス腫瘍の網羅的mRNA解析を行う予定であり、その解析費用として相当の金額を計上する。これらは当初から予定していた金額であり、本年度に全て行う予定である。
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