2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K17685
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西塔 拓郎 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (20646468)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | T細胞疲弊化 / PD1 / 胃癌リンパ節 / エクソソーム / 免疫チェックポイント分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
<目的①>リンパ節領域毎のリンパ球活性化を評価し、リンパ節転移の影響を評価する。 1, リンパ節中リンパ球の解析。現在までに44症例の胃癌サンプルの集積を行った。主腫瘍と1群リンパ節3個+2群リンパ節1個をサンプルリングし、各サンプルよりリンパ球を抽出し、FACS解析した。CD3, CD4, CD8を用いてCD4、CD8陽性T細胞をゲートし、各細胞上のPD-1、TIM-3、CD103などの免疫チェックポイント分子発現を評価した。現在までの結果では、非転移リンパ節、転移リンパ節、腫瘍の順にCD8陽性T細胞上の免疫チェックポイント分子発現が高値となり、逆に非転移の2群リンパ節は1群リンパ節に比較し同免疫チェックポイント分子の発現が低値あった。この結果より、リンパ節に転移を来すとCD8陽性T細胞が抑制され疲弊化し、さらに腫瘍に近い1群リンパ節では転移を来していない状況でも疲弊化の傾向を示すことが推測された。 2, リンパ節中樹状細胞(DC)の評価。同様のサンプルを用いて樹状細胞の評価を行った。樹状細胞はCD3, CD19, CD56, CD14を除外し、HLA-DR陽性細胞の中でCD11c陽性のmyeloid DC (mDC)とCD303陽性のplasmacytoid DC (pDC)に分類、さらにCD1c陽性のmDC2とCD141陽性のmDC1に分類した。分類したDCにおいてCD80, CD83, CD86発現による活性化評価を行った。リンパ節転移を来していないリンパ節においても、mDC上の活性化マーカーの低下がCD8陽性T細胞上のPD1発現上昇と関連する傾向を示している。 以上検討により、転移のないリンパ節でも腫瘍進展に従い免疫が抑制化され、リンパ節転移はさらにリンパ球疲弊化が誘導することが推測された。ヒトにおいて、リンパ節が免疫活性化・抑制化に重要な場であることが再確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の計画概要は次のとおりである。①胃癌患者切除標本および末梢血の採取、②腫瘍組織内・リンパ節内リンパ球の抽出および末梢血中リンパ球の分離・凍結保存、③腫瘍内・リンパ節内エクソソーム上PD-L1検出および末梢血中エクソソーム上PD-L1検出、④腫瘍組織のmRNAの抽出およびcDNAへの逆転写と凍結保存、⑤FACSによるT細胞の活性化状態の解析、⑥エクソソーム上分子発現・T細胞活性化と臨床病理学的因子の相関の解析、⑦腫瘍組織の遺伝子プロファイル、⑧In vitroにおけるエクソソーム内PD-L1のリンパ球抑制実験。 上記による研究計画を予定していたが、現在①②④によるサンプル採取を行っており、現在までに44例のサンプルを集積したが、今後も継続する予定である。以上サンプルを元に⑤の解析を研究実績の概要に示す通り行っている段階となり、意義のある結果が出てきている。今後はリンパ球活性化・抑制化とエクソソーム上の抑制因子との相関を検討する必要があり、③のエクソソーム抽出・検出が今後の課題となってくることが予想されるため、これら方法の確立が現在の検討課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
<目的①>症例集積を継続し、リンパ球の活性化・抑制化と樹状細胞のデータを固定化する。 <目的②>腫瘍内・リンパ節内エクソソーム上PD-L1の検出を試み、各部位のリンパ球活性化と比較検討し、腫瘍局所・リンパ節におけるエクソソーム上PD-L1の免疫抑制機序を解明する。 腫瘍・リンパ節サンプルで、FACSを用いてエクソソーム上PD-L1の評価を行うことを予定しており、使用する蛍光抗体はCD9, CD63, CD81, PD-L1, CTLA-4, TIM-3等を準備している。腫瘍内エクソソームの抽出においては、腎細胞癌腫瘍サンプルよりエクソソームを抽出する方法が報告されており(Jingushi, IJC 2017)、この方法を用いた抽出の条件設定も施行している。リンパ節でも同方法によるエクソソーム抽出が可能か検討する。エクソソーム抽出方が確立された段階で、ウエスタンブロッティング法によりPD-L1の分子評価を予定する。 <目的③>免疫抑制因子として、PD-L1以外の副刺激分子も同様にエクソソーム上に発現することが考えられ、他の分子(CTLA-4, TIM-3, ICOS, LAG-3, OX-40等)についても検討する。 目的②において各サンプルにおけるエクソソーム抽出が可能となった後にウエスタンブロッティング法によりPD-L1以外の他の分子評価を予定する。基本的にはPD-L1検出と同様の方法により検出可能と予想される。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスによる緊急事態宣言の発令により、研究停止期間が発生し、研究の進捗状況に遅れが生じたため
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