2020 Fiscal Year Research-status Report
肺腺癌におけるドライバー遺伝子変異ごとの核異型と細胞像の特徴の解明
Project/Area Number |
20K17738
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
小林 さやか 群馬大学, 大学院保健学研究科, 助教 (80765694)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フォイルゲン染色 / エメリンの免疫染色 / ラミンAの免疫染色 / 画像解析 / 核所見の連続変数データ / 各種蛋白発現の陽性率 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は肺腺癌組織検体を用いて遺伝子異常ごとの核の形状の特徴を画像解析手法によって明らかにすることである。令和2年度前半では対象症例の抽出、臨床情報の収集を実施する計画であった。実際に肺腺癌の手術検体83例を抽出、対象とし、対象症例の性別、年齢、組織型、組織亜型、腫瘍径、ステージを診療情報から得た。当初EGFR, KRAS変異、ALK転座の有無を診療情報から得る計画だったが、診療情報中に記載が無く得ることができなかった。令和2年度後半では、研究実施計画通り核の形状のデータを得るため、群馬大学医学部附属病院病理部で借用した対象のホルマリン固定パラフィン包埋ブロックから未染標本を作製し、フォイルゲン染色、エメリン免疫染色を施行し、これらの染色標本をデジタル画像化した。フォイルゲン染色標本を画像解析し、核面積、核周囲長、真円度の連続変数を得た。この時点で、肺腺癌の核の形状の連続変数データが得られたことは意義深く、このデータは今後の研究を遂行していく上で重要であり中心となる。 一方、 エメリンの蛋白発現が低下または消失している症例が半数程度認められた。このためエメリン免疫染色標本を画像解析し、肺腺癌細胞中のエメリン蛋白発現陰性、陽性の細胞数、陽性率を計測した。これに関連して、エメリンと機能的に相互作用していると考えられている分子にLamin A/Cがあり、肺腺癌での両蛋白発現の有無については報告が無かったため、新たな知見を得られる可能性が高く、追加でラミンAの免疫染色を施行し、蛋白発現陰性、陽性の細胞数、陽性率を計測した。上記の画像解析データより、エメリン発現とラミンA発現陽性率の相関をみたところ、軽度の相関が認められた。これらの結果は本研究の当初の目的とは異なるものの、肺腺癌組織においてのエメリン、ラミンAの発現の有無、相関のデータが得られたことは新たな知見であり意義深い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画では、令和2年度前半では対象症例の抽出、臨床情報の収集を、後半では各種染色の施行と画像解析を行う計画であった。令和2年度前半には対象症例83例の抽出ができた。臨床情報の収集では、EGFR, KRAS変異、ALK転座の有無を診療情報から得る計画だったが、診療情報中に記載が無く得ることができなかった。しかしその他の対象症例の性別、年齢、組織型、組織亜型、腫瘍径、ステージを診療情報から得ることができた。また後半には全83例に対しフォイルゲン染色、エメリンの免疫染色が施行でき、画像解析データも得ることができた。以上より本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度前半では、令和2年度前半でEGFR, KRAS変異、ALK転座の有無を診療情報から得ることができなかったため、EGFR, KRAS変異に絞り変異解析を行う。ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)ブロックからのDNA抽出、両遺伝子の増幅、両遺伝子の変異部位を遺伝子増幅させ、その増幅産物から塩基配列を決定させ、両遺伝子の変異配列の有無を検索する。その後、両遺伝子変異と画像解析結果の対比を行う。また令和2年度後半 に、新たに肺腺癌組織でのエメリン、ラミンA発現に関する知見が得られたため、ラミンB1免疫染色を追加、画像解析し、核内膜蛋白質の発現に関するさらなる知見を得る。 令和3年度後半~令和4年度 では、培養細胞(p53変異株)を用いた変異解析条件の検討を行う。また実際に肺腺癌の手術検体を薄切し、FFPEブロックからのDNA抽出、P53遺伝子増幅、p53のエクソン5-8にある変異部位をnested PCRで遺伝子増幅させ、その増幅産物から塩基配列を決定させ、p53変異配列の有無を検索する。その後、p53変異の結果と画像解析結果との対比を行う。これらの研究成果を論文として投稿する。
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Causes of Carryover |
令和2年度の研究で必要な消耗品等を購入したが、ごく小さい額の残金が発生してしまった。この小さい額の残金で購入できる研究物品・試薬が無かったため、次年度使用額が生じた。 このごく小さい次年度使用額は次年度分として請求した助成金と合わせ、研究で必要な消耗品(変異解析用消耗品等)の購入に使用する予定である。
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