2020 Fiscal Year Research-status Report
特発性肺線維症の線維芽細胞が高分泌するPeriostinが肺癌へ与える影響の研究
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20K17745
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大和 寛幸 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (80836255)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Periostin / 特発性肺線維症合併肺癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請時に記載した実験は①特発性肺線維症(IPF)患者の線維芽細胞におけるPeriostinの発現動向と臨床的因子との相関関係、②IPF患者由来の線維芽細胞から分泌されるPeriostinの機能解析、③線維芽細胞から分泌されるPeriostinが生体内で腫瘍形成能に与える影響と組織学的解析の検討、④ Periostin Anti-sense oligonucleotideの経気道投与の抗腫瘍効果の検討であった. ①:IPF合併肺癌(LC-IPF)と非合併肺癌(LC-nonIPF)それぞれの切除標本(各n=26)でPeriostinを免疫染色し、組織面積に対する陽性率をImage Jで定量した。IPF合併肺癌の癌周囲の特にIPF線維化病変でPeriostinの発現の割合が最も高値であった(P<0.01)。②:正常肺由来 (NHLF, LONZA) とIPF由来線維芽細胞株 (DIPF,LONZA)のそれぞれから培養上清(CM)を作成し、そのCMで肺癌細胞株(A549, NCI-H520)を培養し、増殖への影響を評価した。A549, NCI-H520ともに、DIPF由来のCMで増殖能が有意に亢進を認めた(P<0.01)。③:肺癌細胞株と線維芽細胞株をヌードマウスの皮下に共接種し、DIPFとNHLFの腫瘍増殖の比較をした。腫瘍サイズはDIPFと共接種した群で有意差をもってA549, NCI-H520共に大きく(P<0.05)、免疫染色でもPeriostinが濃染していた。④:検討中である。 現状ではIPF由来の線維芽細胞から分泌されたPeriostinによって肺癌細胞株の腫瘍増大効果は示唆された。次に、IPF由来の線維芽細胞から分泌されるPeriostinを抑制することで腫瘍への影響を検討することで当初からの目標であるIPF合併肺癌における治療標的となりうるかの検討をする方針である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた実験の①-④のうち、①-③までを終えているため。
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Strategy for Future Research Activity |
IPF由来線維芽細胞(DIPF ,LONZA)からのPeriostinによる腫瘍増殖能は認めたので、①Periostinを標的とした治療が有効であるかの検討を行う。②肺切除症例の余剰検体から線維芽細胞を初代培養したものを網羅的に解析する。③ Periostinのsplicing variant(DNAから蛋白が形成される過程でDNAのExonの選択によって微妙な違いのある蛋白が形成される)に着目し、IPFの線維芽細胞から分泌されるPeriostinを解析する。 具体的に①:in vitroの実験としてPeriostinの中和抗体を使用し、DIPF由来の培養上清(CM)内のPeriostinを抑制することで肺癌細胞への影響を評価する。また、肺癌細胞株のIntegrinβ3(ITB3: Periostinの受容体のサブユニット)をKnockdownした細胞を作成し、それらとDIPFを混合群と非混合群をヌードマウスの皮下に共接種し、腫瘍の増殖を評価する。②:肺切除症例の余剰検体から線維芽細胞を初代培養し、正常肺由来、IPF由来、さらに癌関連線維芽細胞(CAF)を集積している。それらを次世代シーケンシングで網羅的に解析し、IPF由来とCAFとの相違性を検討する。③正常組織では発現しないPeriostinのsplicing variantが乳癌において発現しており、in vivoの実験で、パクリタキセルにPeriostinのsplicing variantのみに対しての抗体を同時投与した群で、パクリタキセル単独群より腫瘍の縮小を認めたことが報告されている(特願2007-169494号)。IPFで活性化された線維芽細胞から分泌されるPeriostinのsplicing variantを調べ、それによってsplicing variantの抗体を使って、肺癌細胞への影響を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナの影響で予定していた学会発表の出張費の支払いがなかったため。
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Research Products
(2 results)