2020 Fiscal Year Research-status Report
胸腺癌における免疫療法の治療効果予測新規マーカー探索と網羅的遺伝子解析
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20K17755
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
坂根 理司 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (70779248)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 胸腺癌 / 胸腺神経内分泌腫瘍 / 遺伝子変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
胸腺癌は稀少癌の一つであり、手術による完全切除以外の有効な治療法が確立されていない。本年度は治療標的となり得る遺伝子を検索するために、次世代シーケンサーを用いた網羅的な遺伝子解析を行った。まず、胸腺癌および胸腺神経内分泌腫瘍の合わせて54例のFFPE標本よりDNA抽出キットを用いてDNAを抽出した。DNAの精製および濃度調整をした後、遺伝子パネルを用いてライブラリーの作成および定量/定性を行った。適正なライブラリーを作成した後に、iSeqを用いてシーケンスを行った。続いてVariant Studioソフトウェアを用いて変異Variantについての解析を行い実験結果をまとめた。 最も高頻度であった変異バリアントはTP53遺伝子変異であった。ただし、臨床病理学的因子とTP53との関連は認められず、胸腺扁平上皮癌に絞った予後解析についてもTP53遺伝子変異の有無と予後との関連は明らかではなかった。TP53遺伝子変異に次いで高頻度であった変異遺伝子は、KIT遺伝子(4例)、PDGFRA遺伝子(3例)であった。頻度は低いながらも、これらの遺伝子変異陽性症例においては、イマチニブを始めとするチロシンキナーゼ阻害薬が効果的である可能性が示唆された。また、胸腺扁平上皮癌に絞った予後解析において、KIT、PDGFRA遺伝子を含むチロシンキナーゼ受容体遺伝子群の変異陽性例は、野生型症例と比して有意に予後不良であることを見出した。チロシンキナーゼ受容体遺伝子群の変異陽性例は胸腺癌における予後因子である可能性があり、重要と考えられた。 以上の結果は論文化し、Clinical Lung Cancerにアクセプトされた。また、第121回日本外科学会定期学術集会において発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
胸腺癌における次世代シーケンスを用いた遺伝子変異解析は当初2年間の期間を要すると見込んでいた。しかし、変異バリアントの解析を予想以上に早く実行することができたため、全体として順調に研究を進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
胸腺癌における遺伝子解析の一環として、Tumor Mutational Burden (TMB)やMicrosatellite Instability (MSI)の解析を予定している。その解析により、免疫チェックポイント阻害薬の効果予測因子を同定できる可能性がある。 また、腫瘍微小環境の評価として腫瘍浸潤リンパ球の評価を行う予定である。同時に治療標的となり得るネオアンチゲンについても検索していく予定である。
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Causes of Carryover |
本年度使用した物品や消耗品は、これまでに研究室に設置されていた物品等で一部賄えていたため、予定よりも使用額が少なくなった。差額については、来年度の物品購入等で使用する予定である。
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