ゲノムの詳細解析に基づく若年肺癌発生分子機序の解明

2021 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 20K17770
• Research Institution: National Cancer Center Japan
• Principal Investigator: 角南 久仁子 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 医員 (70766823)
• Project Period (FY): 2020-04-01 – 2023-03-31
• Keywords: AYA世代がん / 非小細胞肺癌 / ドライバー遺伝子

Outline of Annual Research Achievements

本研究では、AYA (Adolescent and Young Adult) 世代がんにおける発がんにつながる分子生物学的機序の解明を目的として、全ゲノムシークエンスを含めたゲノム解析と共に、臨床情報を収集して検討を行っている。AYA世代がんは、全がん種の中でも頻度が少ないことから、社会的な注目度は高いものの、まだ大規模データ解析による発がん要因の特定や治療開発が進んでいないのが現状である。
そこで、難治がんの中でも予後不良な非小細胞肺癌に焦点をあてて、挿入欠失変異や構造異常の頻度及びパターン、融合遺伝子のbreakpoint配列などゲノム上に起きている変化を詳細に評価すると共に、公開データベースから得た非AYA世代肺癌と比較した。具体的にはAYA世代非小細胞肺癌では複数あるドライバー遺伝子異常の内訳として融合遺伝子陽性症例の割合が高い傾向があること、AYA世代においてはEGFR遺伝子変異陽性症例の内訳として、exon 20 L858R変異よりもexon 19 deletion変異の症例の割合が大きいことを示した。さらにEGFR exon 19 deletion変異は多くのバリアントが報告されているが、複数塩基欠失のみのバリアントと、欠失に加えて塩基置換を含むバリアントの頻度をAYA世代の中野年代別に頻度を検証した。また、対象症例における、臨床病期、発生部位、喫煙歴や家族歴、生活歴といった詳細な臨床情報の収集し各種公開データベースからのデータ抽出、比較検討を開始している。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

令和３年度は大規模な全ゲノム解析事業の全国展開があり、全ゲノム解析委託が遅延した。そのため、既に実施済みであったゲノム解析データの検証および臨床データの収集を実施して研究を進めた。

Strategy for Future Research Activity

計画では、令和3年度に特徴的なゲノム変化を示す症例を5例程選択して、全ゲノムシークエンスに着手する予定であったが、未実施であった。令和4年度ではこれまでのエクソームシークエンスをはじめとするゲノム解析データ検証に基づいて全ゲノム解析対象症例を選択し、全ゲノムシークエンスを実施する。また、前年度に引き続いて自施設症例の臨床情報及び、公開データベースからのデータ収集を進める。最終的にはAYA世代と非AYA症例についてゲノム情報及び臨床情報を基に比較検証を行う。

Causes of Carryover

当初実施する予定であった全ゲノムシークエンスの実施できなかったため、解析費用が次年度に繰り越しとなった。また、学会発表等が全てオンライン開催になったことから、旅費もほぼ未使用となった。