2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K17790
|
Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
松岡 豊 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60846707)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | NLRP2 / インフラマソーム / IL-1β / 痛覚過敏 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々の仮説では、手術によって組織炎症部で合成されたセラミドが一次知覚神経内でNLRP2インフラマソームを介してIL-βを活性化させ、これが神経終末で分泌されることで痛覚過敏を惹起するのではというものである。これを検証するために本年度は以下の実験を行った。 術後痛を模したモデルとして、マウスの足底切開モデルを作成し、その一次知覚神経内での活性型IL-1βの発現レベルを免疫染色で確認した。足底切開5分後より脊髄後角で活性型IL-1βの発現は増加し、1時間ほど持続した。脊髄後角で確認できた活性型IL-1βの存在部位は、核を選択的に染色するDAPIと共染色しないことから一次知覚神経の神経終末と考えられ、また脊髄後角第一層のマーカーであるCGRPとの共染色を示すことより、脊髄後角第一層に存在することが確認できた。 我々は以前に炎症性疼痛モデルでcapase-1阻害薬を髄注することで機械的刺激に対する疼痛閾値の低下を確認していたが、今回術後痛モデルにおいても、capase-1阻害薬投与によって投与後数時間における機械的刺激及び熱刺激に対する疼痛閾値の低下を確認できた。また、免疫組織化学法による評価ではcaspase-1阻害薬によって、先に述べた足底切開による活性型IL-1β発現上昇は抑制された。これは我々の先行研究と合わせると、術後痛においても侵襲刺激によって一次知覚神経内でNLRP2を介し、IL-1βを活性化していると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以前に炎症性疼痛モデルとしてCFA、セラミドを疼痛惹起物質として足底に投与し、一次知覚神経内でNLRP2及び活性型IL-1bの発現の増加を確認し、caspase-1阻害薬の投与によって痛覚閾値の低下を確認し、また活性型IL-1βの増加抑制を確認していたことから、その工程を足底切開モデルに適応させたものであり、本年度の研究工程の進捗状況については特に遅滞することなく概ね順調に進捗できたと言える。NLRP2阻害としてのsiRNAを投与する実験も施行したかったが、その調整にやや難航した面もあった。2021年度以降の課題としたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記に述べた、脊髄での活性型IL-1βの発現量の評価を免疫組織化学法以外にウェスタンブロッティング法で行って評価を試みるとともに、NLRP2のsiRNAを投与しインフラマソームとして阻害した際の活性型IL-1βの発現量を確認したい。またその際に、足底組織の乾湿重量比を測定し、切開刺激による組織炎症の程度も評価したい。 今後行う必要がある研究手技として、足底組織におけるセラミドの含有量の定量評価、セラミド合成酵素を阻害した際の疼痛状況の変化を確認していく必要がある。後者については以前にNLRP2のsiRNAを用いたRNA干渉法を行なった経験から同様に施行できると考えているが、前者については研究代表者は未施行の領域の研究内容であり、他者に指導を仰ぎながら行なっていく所存である。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大のために国際学会含め各種の学会が中止もしくはオンライン開催となり、そのための旅費が算出されたなかったこと、及び、所属研究機関内の他者との実験器具の共同利用によりその費用を削減することが可能であった。今後の研究で予期せぬ出費が生じずとも限らず、今後に生かしたいと思う。
|