2020 Fiscal Year Research-status Report
Examination of effect on AKI prevention effect of hemoglobin vesicles
Project/Area Number |
20K17792
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
内藤 祐介 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (00623498)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ヘモグロビン小胞体 / 急性腎不全 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は提出したプロトコールに則り予備実験を開始した。本実験では保存した同種血を投与する群およびHbVを投与する群の2群に分類し急性腎機能障害の程度の差を検討する予定である。予備実験では保存する同種血の日数、術後何日目を指標として用いるか、投与する輸血の量の3点で実験の成果が最大になるポイントを模索することを目的として実施した。 予備実験はSDラット300-330gを対象として実験を行った。あらかじめ同種血として保存した血液を麻酔下に緩徐に脱血しながら同量投与した。投与後、吸入麻酔のイソフルランを中止し、抜管可能であった個体は抜管し、ケージに戻し術後の腎標本および血清クレアチニン値、BUN値、L-FABP値を検討した。当初のプロトコールでは28日経過後の血液を用いる予定であったが生存する個体数が極端に少なかったため、8匹の実験を行ったのち、プロトコールを変更し検討を行った。 投与する容量に関しては、同種血の量を14mLから25mLと投与量をステップアップしていき検討を行った。14mLの場合は腎機能障害の発生頻度に大きな差がなかったこと、25mL投与は術後2日目の死亡率が高く実験として不適切であった。 最終的に20mLを投与が最適であることが判明した。術後何日目をアウトカムとして用いるかについては、1日目と2日目を検討した。2日目は生存率が低く、死亡した個体は腎機能障害が原因として多く含まれている可能性が病理学的所見より示唆されたため、1日目で検討することを決定した。 輸血の保存期間は14日、21日、28日で検討を行い最終的に21日目を用いることとした。 最終的に確立された実験系ではSham群に比較して腎臓組織標本で近位尿細管壊死所見および同部位の管腔閉塞所見、L-FABP値の上昇が認められた。なお、BUN, クレアチニン値はSham群と比較して有意な差がなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来であれば、2020年度中にHbVとの比較を実施する予定であったが、コロナ禍により本格的な実験開始が9月中旬にずれこんだため、2021年5月現在、約半年遅れで実験を遂行中である。 来月を目処にHbV投与実験を開始する予定である。 原因としては実験系に関する事項および社会的制約による事項の2点が挙げられる。 1)集中治療を要する患者がCOVID-19により増加し我々麻酔科医の働き方が大幅に変更になり研究が実施困難であった(当直ではなく、3交代性の勤務になるなど、大幅な変更があった) 2)想定していた実験系ではラットの術後2日目の生存率が極端に低く、プロトコールの見直しおよび最適な輸血投与量の検討が新たに必要であった
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Strategy for Future Research Activity |
応募当初のプロトコールに則り実験を遂行する予定である。問題点として、現在懸念しているのが、人工心肺を用いたモデルの作成である。2022年度よりは人工心肺モデルの確立および同モデルを用いた腎機能障害の検討を行う予定であったが、同モデルを作成し多くの実験を実施している複数の施設への見学を予定していた。その中には海外(多くは中国)も含まれていたが、現在の社会的状況を鑑みると実際の見学は困難であると思われる。 現在、論文の責任著者にメールを送っているものの先方から返信がない状況である。同種の実験をラットで行っている国内の施設での見学など、別の方策を検討する必要が出てくる可能性がある。
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Causes of Carryover |
本実験における購入物品で高額なものは血液ガス分析装置(i-STAT)の消耗品カートリッジおよびL-FABPのエライザキットの2点である。当初提出したプロトコールにおいても初年度より予算として計上していたものの、交付された金額が偏りがあり当初の予定通り遂行していたとしても不足することが予想される額であった。なお、次年度に200万円程度の交付を内定していただいているが、人工心肺モデルの作成を行う2022年度の計画を前倒ししない限り本年は予算が過剰となる予定である。
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