2020 Fiscal Year Research-status Report
疼痛の慢性化に関与する視床-高次脳領域の神経回路基盤の病態解明
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20K17811
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
岡田 卓也 神戸大学, 医学部附属病院, 特定助教 (70792935)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 2光子顕微鏡 / 第一次体性感覚野 / 慢性疼痛 / 視床 / 化学遺伝学的手法 / 生体イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
神経障害性疼痛に代表される慢性疼痛は就労困難など社会経済的機能の低下をもたらすためその病態を明らかにするのは喫緊の課題である。脊髄における神経細胞やグリア細胞の機能的変化が慢性疼痛の発生や維持に関与することがこれまで示されてきた一方で、近年大脳皮質や大脳辺縁系における機能的変化が病態の形成に重要であることが示唆されている。しかしながら、高次脳領域に着目し、疼痛の慢性化に寄与している神経回路の同定およびそのメカニズムを詳細に検討した研究は少ない。そこで本研究では、化学遺伝学的手法と2 光子顕微鏡による生体カルシウムイメージング法と組み合わせ、疼痛伝達路の中継点である視床から投射される神経回路を特異的に操作することで、疼痛の発生や維持に関与する神経回路基盤を明らかにしようと考えた。まず、大脳皮質第一次体性感覚野後肢領域(S1HL)に逆行性トレーサーを注入することで、視床後核からS1HLに投射があることがわかった。さらに化学遺伝学的手法により視床後核からS1HLの経路の活性を特異的に変化させることで疼痛閾値に影響を及ぼすことがわかった。今後はこの結果を神経障害性疼痛モデルマウスなど慢性疼痛モデルマウスを用いた2光子顕微鏡を用いた生体イメージングと関連させ、数理学的解析を行うことで疼痛の慢性化に関与する神経細胞集団(興奮性神経細胞や抑制性神経細胞など)の特徴を抽出することを目標としている。本研究によって、難治性である神経障害性疼痛に関与する神経回路基盤を解明する糸口となることが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大脳皮質第一次体性感覚野後肢領域(S1HL)に逆行性トレーサーを注入することで、視床後核からS1HLに投射があることが判明し、さらに化学遺伝学的手法により視床後核からS1HLの経路の活性を特異的に変化させることで疼痛閾値に影響を及ぼすことがわかった。ここまでの過程は順調であったが、COVID-19の流行による臨床業務の多忙により生体イメージングの研究が思うように進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今もなおCOVID-19の流行が収まらず、多忙ではあるが本研究の目標である慢性疼痛モデルマウスを用いた2光子顕微鏡を用いた生体イメージングによって視床ー高次脳領域の特異的神経回路の活動性と疼痛の慢性化の関連を検証し、数理学的解析を行うことで疼痛の慢性化に関与する神経細胞集団の特徴を抽出することを目標とする。特に、視床後核ー大脳皮質第一次体性感覚野の興奮性神経細胞や抑制性神経細胞の活動性と疼痛閾値の変容に着目して研究を進めることとする。
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Causes of Carryover |
前倒しによって不足となると予想された額を請求したが、コロナ診療により思うように研究時間が確保できず使用しなかった予算があった。来年度に計画している生体イメージングなどの研究にその予算を充てる計画である。
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