2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidating Drug Targets and Mechanisms of Action in Post Operative Delirium by Multiple Proteomics Approach of Human CerebroSpinal Fluid
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20K17835
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
中森 裕毅 三重大学, 大学院医学系研究科, リサーチアソシエイト (80815994)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | プロテオミクス / 術後せん妄 / POD / 脳脊髄液 / SWATH / Myokine / FNDC5 / Irisin |
Outline of Annual Research Achievements |
TEVAR(thoracic endovascular aortic repair)の際に対麻痺目的で予防的に挿入した脳脊髄液ドレナージカテーテルから経時的に採取した脳脊髄液を用いて、これまでに確立したヒト脳脊髄液の前処理方法(限外濾過およびAlbとIgGの除去)の後にプロテオーム解析を行った。解析はsequential window acquisition of all theoretical fragment ion spectra(SWATH)法で行い、脳脊髄液検体のプロテオームを時系列で比較した。 実際の手術前後の検体では、手術や全身麻酔の侵襲をはじめ脳脊髄液プロテオームに影響を与える因子が多く、機序の理解が困難である可能性があるので、全身麻酔に先行して上肢の虚血再灌流処置を施行し、その前後でのプロテオームを比較した。虚血再灌流処置は過去の大規模臨床試験ではremote ischemic preconditioningとして用いられてきた圧式カフを用いた上肢200 mmHgの加圧(5分施行5分解除)を3サイクルにて行うことで安全性および倫理的問題に十分に配慮した。 結果、代表的なMyokineであるFNDC5およびSPARCが脳脊髄液内でRIPC施行1時間後に有意に増加することが示された。結果は循環制御誌に報告した。 一方で対象とした症例において術後認知機能障害(POCD)の発生はなく、術後せん妄(POD)の発生は一例に過ぎなかった。POD発生例ではTEVARの影響と考えられる対麻痺を発症しており、本研究の計画段階で意図した、手術侵襲や全身麻酔薬による全身的な炎症反応に基づくせん妄の発症とは機序が異なる可能性があるも対麻痺による歩行障害や骨格筋の収縮抑制という点がせん妄誘因の本質であるとすると機序解明の一助となりえた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト脳脊髄液臨床検体を用いた時系列プロテオミクス解析は非常に挑戦的な試みであったが、Myokineの変動という結果を得ることができた。上肢の虚血再灌流処置により脳脊髄液中のFNDC5が増加することは、骨格筋脳連関を示唆するものであった。
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Strategy for Future Research Activity |
脳脊髄液中のFNDC5の変動がなぜせん妄に影響を与えうるのか、その前段階としてFNDC5による炎症への影響をin vitroモデルで解析することを予定している。具体的には、リンパ球由来Cell line(Jurkatなど)の培養において、FNDC5の添加が与えうる影響を解析したい。その際のコントロールとしては、BSAやヒトfibronectinを想定している。 解析方法としては、細胞増殖への影響をMTT assayで行う。また、FNDC5が与えうる細胞内シグナルはwestern blottingを用いてFAKのリン酸化の程度で評価したい。FAKinhibitorやintegrinの中和交代を加えることで、細胞に生じた変化が、FNDC5とintegrinの結合に起因するFAK系シグナルの亢進に基づくものかを検討したい。 一定の結果が得られれば、マウスにFNDC5を投与して、与えうる影響を評価する。
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Causes of Carryover |
SWATHを用いた解析が予想以上に順調に進んだため、解析に用いる費用が抑えられた。また新型コロナウイルス感染症の流行により、多くの学会がWeb開催となったため、発表や情報収集のために参加する学会の旅費が不要になった。 繰り越された金額は、in vitroでの実験系を確立するための予算にあてたい。特にMTT assayやWestern blottingのための試薬や備品の購入は、一件あたりは高額でなくとも多数種におよぶので相応の金額を要すると予想している。
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Research Products
(5 results)