2023 Fiscal Year Research-status Report
Elucidating Drug Targets and Mechanisms of Action in Post Operative Delirium by Multiple Proteomics Approach of Human CerebroSpinal Fluid
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20K17835
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
中森 裕毅 三重大学, 医学系研究科, リサーチアソシエイト (80815994)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | プロテオミクス / 術後せん妄 / POD / 脳脊髄液 / SWATH / Myokine / FNDC5 / Irisin |
Outline of Annual Research Achievements |
TEVAR(thoracic endovascular aortic repair)の際に対麻痺目的で予防的に挿入した脳脊髄液ドレナージカテーテルから経時的に採取した脳脊髄液を用いてプロテオーム解析を行った。脳脊髄液中のタンパク濃度は血液と比較して200分の1ほどと薄いが、限外濾過とAlb・IgGを除去することにより、プロテオミクスに耐えうるサンプルを精製することに成功した。SWATH(Sequential window acquisition of all theoretical fragment ion spectra)によるプロテオーム解析を施行し、ヒトの脳脊髄液内の561種のタンパクを同定した。 また、時系列でのプロテオームの比較も試みたが、実際の手術前後の検体では、手術や全身麻酔の侵襲をはじめ脳脊髄液プロテオームに影響を与える因子が多く、機序の理解が困難である可能性があるので、全身麻酔に先行して同意を得た症例に対し、上肢の虚血再灌流処置(過去の大規模臨床試験でremote ischemic preconditioningとして用いられてきた上肢200 mmHgの5分加圧5分解除を3サイクル)を施行し、その前後でのプロテオームを比較した。結果、代表的なMyokineであるFNDC5およびSPARCが脳脊髄液内でRIPC施行1時間後に有意に増加することが示された。結果は循環制御誌(2021年42巻 2号p.92-99)に報告した。 RIPC後に有意に変化していたFNDC5に着目し、炎症とMyokineの関連を解明すべくin vitroでの研究に移行した。リンパ球由来Cell line(Jurkatなど)の培養において、FNDC5の添加が与えうる影響を解析した。コントロールとしては、BSAやfibronectinを用い、解析方法としては、MTT assayで細胞増殖能の変化を探索している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト脳脊髄液の臨床検体のプロテオーム解析で検体精製方法を確立し、有意なタンパクを複数同定できた。またRemote Ischemic Preconditioning に伴う経時的脳脊髄液プロテオーム変動の解析をできたことは大きな成果であった。循環制御(2021年42巻 2号p.92-99)に報告した。創薬標的の探索に関しては代表的なMyokineであるFNDC5をターゲットとしている。その後、FNDC5を用いたin vitroの研究に移行している。
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Strategy for Future Research Activity |
in vitroの研究に移行している。 これまでのところ、FNDC5がリンパ球由来Cell line(Jurkatなど)の細胞増殖に有意な影響を与えるという結果は得られていない。FNDC5に限局せずに、Integrinなどの細胞接着分子にも目を向け、まずはリンパ球由来Cell lineの細胞増殖の変化をはっきりと観察できる実験系の作成を目指す。また、分子機序的にはFAKinhibitorの添加なども選択肢となりうる。 視点をややマクロに移し、マウス骨格筋から抽出したexosomeを添加することも考慮する。exosomeの抽出自体は超遠心を用いたプロトコールは既に確立できており、CD9、CD63、CD81によるFACSでのexosomeの評価も実施できた。特定の分子構造ではなく骨格筋由来exosomeという総体の方がより生理的な現象を解明するのに有効かもしれない。 一定の結果が得られれば、vitroからin vivoへと実験を展開させていく。
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Causes of Carryover |
in vitroの実験を主に行ったが、検査機器や試薬はすでにラボにあるものが多く、Cell lineもラボに保管されていた細胞を用いたので、新規に購入を要するものがなかったため。 今後は、in vitroでの実験条件を確立するための試薬(PMA,ionomycin,IL-2,PHA,LPS,FAK-inhibitorなどを検討)を購入する。また、MTT assayやWestern blottingのための試薬や消耗品の購入の必要も見込まれる。
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Remarks |
日本心臓血管麻酔学会試験問題作成委員会にて、脳脊髄ドレナージ管理や術後せん妄管理についても提言 日本麻酔科学会U40WGにて、総合的に40歳以下麻酔科医として活動
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