2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of lung and renal assist device using layered double hydroxides
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20K17884
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
高橋 希 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (30770268)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 呼吸不全 / 人工呼吸器関連肺障害 / 二酸化炭素除去 / 体外循環 / 腎障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
環境用,工業用として注目されている二酸化炭素吸着能を持つ化合物であるハイドロタルサイトに着目し,これを応用することで肺と腎臓の両方の臓器補助能を有する新規人工臓器の開発を着想した.まず本年度はハイドロタルサイトを吸着膜に適した形状に化合制作し,これ実際に血中の二酸化炭素を吸着し除去できるかについて研究を行った. 最初にハイドロタルサイトの適切な形状を見出すための基礎実験を行った.粒子径の違う3種類を用いて実験用豚血液のCO2除去能を確認したところ,粒子径が小さいものはよりCO2除去効率が高まることが分かった.これは粒子径が小さいと表面積が増加するためと考えられた. 続いて,血液浄化療法としてハイドロタルサイトを応用するために,既存の血液浄化膜として広く使用されているポリスルホン膜にハイドロタルサイトを担持した.これは物理的にハイドロタルサイトを膜の層に混合させる方法であり,電子顕微鏡にて確認している.まずは中空糸膜ではなく名刺サイズ程度の平膜として制作し,混合濃度を分けてCO2除去効率を確認することとした. 実験用豚血液は二酸化炭素の除去能の確認のため,溶存二酸化炭素濃度を60-80mmHgとした呼吸不全モデルとした.これにハイドロタルサイトを混合した膜を入れて機械的な混和を行い,定期的にCO2濃度を測定した.この実験により,ハイドロタルサイトの混合濃度に依存してCO2が除去され,しかも2時間程度混和を継続してもまだ吸着能が残存することが証明された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の2020年度の計画は,実験用豚血液の作成,ハイドロタルサイト充填量と二酸化炭素吸着能に関する実験,および血液浄化器後のpH等の確認と透析液流量の至適化に関する実験が目標であったが,透析液流量の至適化については現在調整しているものの概ね目標としていた内容は実行し進捗は順調と考えた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまずEx-vivo実験の確立に向けた基礎実験および中空糸膜の制作を行う.豚血液を用いて一回通過型の回路を作成し,そこに作成したハイドロタルサイトを担持した血液浄化膜を通過させさらに直列に通常の血液浄化器を設置してCO2除去の確認及び各種電解質等の推移を確認し,必要に応じて電解質調整などの追加をシステムに組み込む. その後は動物実験を行う.まず二酸化炭素吸着器の有効性の確認として実験用豚を全身麻酔下として気管挿管,人工呼吸管理とする.筋弛緩薬を用いることで自発呼吸を消失させ,人工呼吸器依存として動脈血液ガスでPCO2値が60-80mmHgとなるように適宜換気圧を調節する.設定されたタイミングで動脈圧ライン,血液浄化回路脱血部分,二酸化炭素吸着器前後,血液浄化器前後,血液浄化回路送血部分で血液ガスを測定する.血液ガス分析で得られるPCO2値を元に二酸化炭素除去量(⊿CO2)を算出する.Primary endpointは動脈圧ラインから測定した血液ガスにおけるPCO2値を正常値である45mmHgとするために必要となる呼吸回数の推移とする.さらに二酸化炭素吸着器の経時的変化の確認する.二酸化炭素の吸着能は有限であることから,二酸化炭素除去量の経時的変化を確認し,実際に使用できるライフタイムを確認する.これらの実験により,二酸化炭素が有効に除去され,その結果,本研究の目的である肺保護換気として低換気量による人工呼吸管理の実践が可能であることを明らかにする.
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Causes of Carryover |
現在使用しているハイドロタルサイト担持血液浄化膜はポリスルホン膜を平膜としたものを使用しており,したがって将来的な実用化を見据えて中空糸膜に性状を進化させたものを開発する必要がある.電子顕微鏡で観察するとハイドロタルサイトは比較的浅層に多く担持されていることが分かっているが,中空糸膜形状にするにはある程度均一化し,かつハイドロタルサイトが流れている液体に流出しないように加工する必要がある.これらの機材の開発のためにポリスルホン膜以外にも複数の既存の血液浄化膜に担持を試みてその除去能や担持力を含めて確認する必要があり,さらに実験用豚血液やこれを適切な濃度に調整するための人工肺を用いる必要があるため,次年度の使用額が生じる.
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