2020 Fiscal Year Research-status Report
植物性エストロゲン摂取による脳動脈瘤の破裂予防効果とメカニズムの検討
Project/Area Number |
20K17889
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
木村 哲朗 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (00467250)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脳動脈瘤 / 動物モデル / 植物性エストロゲン |
Outline of Annual Research Achievements |
脳動脈瘤破裂は死亡率が高く、生存患者しても社会復帰困難な障害を残すことが多い重篤な疾患である。脳動脈瘤破裂の危険因子の一つとして閉経後女性が知られており、エストロゲンの保護効果が示唆されている。しかし、心血管保護を目的とした臨床試験において、エストロゲン補充による種々の有害事象が明らかとなっている。植物性エストロゲンは、組織特異性と共に様々な程度のアゴニスト活性およびアンタゴニスト活性を示す食物由来のエストロゲン様化合物である。食事での植物性エストロゲン摂取は、特に長期的な予防的介入を考慮すると、脳動脈瘤破裂予防の有望かつ実用的な治療アプローチとしての可能性を有する。本研究では、植物性エストロゲンの脳動脈瘤破裂保護効果およびメカニズムの解明を目指す。 当該年度はマウス脳動脈瘤モデルを用いて、代表的な植物性エストロゲンであるダイゼインの腸内細菌代謝産物であるエクオールが、内因性エストロゲンが低値である雄マウスおよび卵巣摘出雌マウスでは脳動脈瘤破裂を低下させるが、循環エストロゲンを有する偽手術雌マウスでは破裂を保護しないと仮説を立て、脳動脈瘤の形成率および破裂率を比較した。またマウス脳動脈瘤のウィリス動脈輪を摘出し、炎症性サイトカインをターゲットとしてRT-PCR法で評価した。今後は、エクオールの前駆体ダイゼインの食餌性摂取による脳動脈瘤の破裂予防効果の検証、エストロゲン受容体サブタイプ(ERS2)特異的ノックアウトマウスおよび薬理学的遮断を利用して、エストロゲンの保護効果に対するエストロゲン受容体サブタイプ寄与の検証を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度はマウス脳動脈瘤モデルを用いて、代表的な植物性エストロゲンであるダイゼインの腸内細菌代謝産物であるエクオールの卵巣摘出有/無雌マウスを用いた脳動脈瘤への影響を検証した。同様にエクオールの前駆体ダイゼインの食餌性摂取による脳動脈瘤の破裂予防効果の検証を行う予定であったが、当該年度中には研究を進めることができなかったため、やや遅れているとした。 本研究ではマウス脳基底槽に定位的にエラスターゼを局所投与する事で脳血管中膜弾性板の破壊を引き起こし、さらに薬剤誘発性高血圧によるshear stressを脳血管に加える事で、80%の確率で脳動脈瘤が発生するマウス脳動脈瘤モデルを用いる。薬剤誘発性高血圧を誘導するために用いるDOCA(Deoxycorticosterone acetate)は海外製剤で輸入により調達しているが、コロナ禍により海外の生産ラインが中断し、一時的に入手困難な状況となり動物モデルの作成が滞った。現在はDOCA生産も安定しつつあり、入手可能となっているため、引き続き検証を継続していく。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、エクオールの前駆体ダイゼインの食餌性摂取による脳動脈瘤の破裂予防効果の検証、エストロゲン受容体サブタイプ(ERS2)特異的ノックアウトマウスおよび薬理学的遮断を利用して、エストロゲンの保護効果に対するエストロゲン受容体サブタイプ寄与の検証を継続して行う。
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Causes of Carryover |
動物モデル作成薬物の調達がコロナ禍の影響で滞り、実験に遅滞がみられた。そのため、残余額が生じたと考えている。 次年度には本年度の研究継続に加えて、エクオールの前駆体ダイゼインの食餌性摂取による脳動脈瘤保護効果の検証、遺伝子改変マウスを用いた研究を加速させ、未使用分を活用することを計画している。
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