2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K17929
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
宮田 悠 滋賀医科大学, 医学部, 客員助教 (40869749)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脳動脈瘤 / 破裂機序 / 慢性炎症 / 動物モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では、脳動脈瘤の破裂に至る機序の検証を行うことを目的としている。そのために脳動脈瘤の自然破裂を発症するモデル動物を使用している。我々はこの目的に合致する、高率に脳動脈瘤の発生と自然破裂が誘発されるモデル動物の樹立に成功しており、ヒトの脳動脈瘤の病理学的特徴である内弾性板の断裂・中膜平滑筋の脱落・リンパ球を中心とした炎症細胞浸潤等が再現できることを報告している (Miyata H et al. J Neurosurg. 16: 1-11, 2019)。本モデル動物には破裂を起こさない安定な脳動脈瘤 (前大脳動脈-嗅動脈分岐部瘤)と、約半数が破裂する破裂危険性の高い脳動脈瘤 (前交通動脈ないし後交通動脈瘤)の2種類が誘発される特徴がある。同一個体内で破裂危険性の異なる2種類の脳動脈瘤標本を、破裂の影響が出現する前に比較できるため、脳動脈瘤破裂を制御する機構に直結する解析結果を得ることができる。これらを病理学的に比較することで破裂危険性の高い脳動脈瘤では安定な脳動脈瘤に比して、vasa vasorumの増生や炎症細胞浸潤が有意に多いことを確認し、すでに報告している (Miyata H et al. J Neurosurg. 16: 1-11, 2019)。本研究では脳動脈瘤破裂を制御する機構を網羅的遺伝子発現解析にて検討し、得られた候補因子について詳細に検討する。また、脳動脈瘤における血管壁の器質的変化を惹起するメカニズムをモデル動物においてさらに解析し、惹起された器質的変化が誘導する血管壁の炎症反応・退行性変化の詳細を解析することで、脳動脈瘤破裂に至る機構の解明を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述した脳動脈瘤の自然破裂を発症するモデル動物において、破裂危険性の低い安定な脳動脈瘤をコントロールとした、破裂危険性の高い脳動脈瘤壁のRNAシーケンス法による網羅的遺伝子発現解析の結果はすでに取得した。その中では脳動脈瘤の発生・増大に重要であった炎症細胞のマクロファージに加えて、好中球の関与が示唆された。脳動脈瘤破裂における好中球の関与を解析するため、先述のモデル動物に対してG-CSF投与にて病変部に浸潤する好中球を増加させる試験を行った。その結果、G-CFF投与群ではプラセボ群に比して病変部における好中球浸潤は有意に増加し、脳動脈瘤自然破裂も有意に増加することを昨年報告した (Kushamae M et al Sci Rep. 10: 20004, 2020)。 一方、先述の通り破裂危険性の高い脳動脈瘤には壁の器質的変化 (vasa vasorum増生)が認められ、FGF2の発現と相関することを確認している。また、モデル動物の脳動脈瘤破裂標本の免疫組織学的解析において、破裂脳動脈瘤にみられた好中球浸潤は脳動脈瘤壁のvasa vasorum近傍に多いことを確認した (Kushamae M et al Sci Rep. 10: 20004, 2020)。
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Strategy for Future Research Activity |
本モデル動物における脳動脈瘤壁の器質的変化を惹起する因子として低酸素応答関連因子が候補となるため、免疫染色およびHypoxyprobeを用いたin vivoでの組織低酸素の検出を行い、器質的変化を惹起する候補因子を検討する。子の中から、vasa vasorum形成を反映する分子マーカーを検討し、破裂危険性を予測する質的診断法開発へつなげる。 また本来、生理的には頭蓋内血管にvasa vasorumは存在しない。脳動脈瘤壁でのvasa vasorumの形成が血管腔内から発生するvasa vasorum internaか、外膜側から発生するvasa vasorum externaであるかについても検討する。血管新生の薬剤的な抑制を行うに際して、血中からの薬剤投与が好ましいか、あるいは髄液中からの薬剤投与が有効であるかを検討するためにも重要な観点であると考える。具体的には、脳動脈瘤モデル動物に生体で使用可能な蛍光標識レクチン (トマトレクチン)を投与し内皮細胞を標識した上で病態各段階の脳動脈瘤標本を摘出し、多光子顕微鏡を用いた観察で脳動脈瘤および外膜血管(vasa vasorum)の構造を3次元画像で再構築し、脳動脈瘤壁のvasa vasorumの起源を同定する。また近年、ガドリニウム造影剤を用いたMRIでの脳動脈瘤のvessel wall enhancementに関する報告が散見され、ガドリニウムの造影効果と脳動脈瘤の破裂危険性が相関するとされている。血管壁が造影効果を受ける機序の可能性として、①脳動脈瘤の血管内皮機能の低下、②vasa vasorumからの造影、③炎症細胞の取り込みが考えられる。①、②の可能性にアプローチするため、モデル動物にエヴァンスブルーを投与した後、脳動脈瘤標本を摘出し共焦点顕微鏡で観察し透過性亢進部位を同定することで血管外漏出の主座を確認する。
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Causes of Carryover |
当該年に算定していた国際・国内学会等、出張旅費等が新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から必要なくなったことなどの影響です。
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[Journal Article] Involvement of neutrophils in machineries underlying the rupture of intracranial aneurysms in rats2020
Author(s)
Mika Kushamae, Haruka Miyata, Manabu Shirai, Kampei Shimizu, Mieko Oka, Hirokazu Koseki, Yu Abekura, Isao Ono, Kazuhiko Nozaki, Tohru Mizutani, Tomohiro Aoki
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 10
Pages: 20004
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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