2020 Fiscal Year Research-status Report
加齢性認知機能障害に対する新規治療法の開発を目的とした糖蛋白LRGの機能解析
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20K17940
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
秋葉 ちひろ 順天堂大学, 医学部, 助教 (40837754)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | モデル作製 / LRG発現 / タモキシフェン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は組織特異的LRG過剰発現遺伝子組み換えマウスの作製を行った。これは、LRGの過剰発現を後天的に、かつアストロサイト特異的に誘導することによりヒトの生理的な加齢に近似させたモデルマウスである。 先行研究で作製した遺伝子組み換えマウスがアストロサイト及びニューロンに先天的にLRGが過剰発現する「LRG1flox_Tgマウス」にSlc6a11_CreERT2マウスを掛け合わせたF1マウスを作製し、同モデルマウスにタモキシフェンを腹腔内投与することにより、成熟アストロサイトに特異的なLRGの過剰発現を後天的に誘導した。 安定した繁殖が可能となったのを確認してから、タモキシフェン投与量の検討を行った。生後16週において、200mg/kgと150mg/kgの投与を各4個体で行ったところ、3週間の経過観察期間内に両群で明らかな体重減少を認めた。そのため100mg/kgと50mg/kgの投与を試行し、タモキシフェン減量後は体重減少が惹起されないことを確認した。 タモキシフェン投与後10週で脳検体のサンプリングを行い、ELISAと免疫染色にてLRG発現を解析した。タモキシフェン100mg/kg投与群では非投与群と比較し明らかなLRG高発現が認められた。本研究ではモデルマウスとしてタモキシフェン100mg/kg投与を行うこととした。 続いて、タモキシフェンの投与時期を変えることにより、LRG発現時期の異なるEarly-LRG群・Mid-LRG群・Late-LRG群を作製する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調である。さらにタモキシフェンの投与時期を変えることにより、LRG発現時期の異なるEarly-LRG群・Mid-LRG群・Late-LRG群を作製し、その脳検体のサンプリングができれば、2021年度目標は遂行されることになる。
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Strategy for Future Research Activity |
LRG発現時期の異なるEarly-LRG群・Mid-LRG群・Late-LRG群を作製し、各モデル群において標本作製および蛋白抽出を行う。脳標本において脳萎縮や脳室拡大を形態学的に評価し、さらに大脳および海馬において病態を反映する免疫組織学的所見を解析する。つまり、酸化ストレスマーカーとして8-OHdG・4-HNEの発現増加、アストロサイト障害として電子顕微鏡を用いたアストロサイトの減少や形態異常の観察、シナプス障害マーカーとしてSynaptotagminの発現減少を示す。その他の病態特異的蛋白も適宜追加し解析する。蛋白発現の解析は大脳および海馬のウェスタンブロット法と免疫染色にて、脳の形態評価はKB染色標本にて行う。病理学的変化を継時的に評価するため、評価時期は各々タモキシフェン投与完了の8週後・16週後および48週齢とする。対照は、同週齢の非タモキシフェン投与群(LRG発現誘導なし)とする。 さらに、各モデル群において、記憶機能および運動機能を評価するため、Y字迷路試験およびモリス水迷路試験による行動試験を行う。施行時期は各々タモキシフェン投与完了の16週後とし、加えてLRG暴露期間の違いによる影響を評価するため各群48週齢にて同様の行動実験を施行する。対照は同週齢の非タモキシフェン投与群とする。行動実験終了後に適切な方法で安楽死させ、摘出した脳検体を標本作製または蛋白抽出のため適切に保管する。
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Causes of Carryover |
脳検体において病態を反映する免疫組織学的所見を解析す際に必要となる、酸化ストレスマーカーとしての8-OHdG・4-HNEやシナプス障害マーカーとしてのSynaptotagmin、その他の病態特異的蛋白を解析するための抗体・試薬が未購入であるため。研究計画に基づいた実験に研究費を充当する。
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