2022 Fiscal Year Research-status Report
加齢性認知機能障害に対する新規治療法の開発を目的とした糖蛋白LRGの機能解析
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20K17940
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
秋葉 ちひろ 順天堂大学, 医学部, 助教 (40837754)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | LRG / モデルマウス / 記憶 / 海馬 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに、作製した組織特異的LRG過剰発現遺伝子組み換えマウス(糖蛋白LRGの過剰発現を、後天的かつアストロサイト特異的に誘導することにより、ヒトの生理的な加齢に近似させた病態モデルマウス)を用いた。同モデルマウスにタモキシフェンを腹腔内投与することにより、成熟アストロサイトに特異的なLRGの過剰発現を後天的に誘導した。 タモキシフェン投与量を検討し、200 mg/kg×5日間のタモキシフェン投与にて、頭蓋内のLRG発現量は、タモキシフェン非投与群と比較し皮質で6.0倍・海馬で20.3倍となることを確認した。体重減少等の有害事象は認めなかった。海馬において優位に過剰発現が誘導される傾向は、研究責任者の先行研究と同様の結果であり、信頼性のあるものである(Akiba et al. Leucine-rich α2-glycoprotein overexpression in the brain contributes to memory impairment. Neurobiology of Aging. 2017)。続いて、LRG発現時期の異なるEarly-LRG群・Mid-LRG群・Late-LRG群を作製すべく、タモキシフェン投与時期をそれぞれ8・24・48週齢とするモデルマウス群を作製することを目指し、まずは8週齢と16週齢で、それぞれ投与後5日で脳検体のサンプリングを行った。その結果、各週齢ともタモキシフェン投与群でリン酸化CREB(cAMP-responsiveelement-bindingprotein)の発現が海馬歯状回に見られた。CREBは、長期記憶の形成に重要な転写因子のひとつで、リン酸化により活性化することが知られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初想定していた研究計画よりやや遅れている。理由として、第一に初年度において新型コロナウィルス対策として研究室への出入りに制限があり、その遅れを取り戻すに至っていないこと、第二に同時期に抗体・試薬の海外からの搬送に時間を要したこと、第三に、本研究のみならず当研究室における他の研究にも遅延が生じたため、実験助手のサポートも得にくい状況であったこと、第四にモデルマウスの飼育される施設の移動のため、繁殖が制限されたことが挙げられる。しかしながら、研究計画は明確で遂行可能なものであるため、今後も本研究を継続し、研究成果を海外雑誌に論文投稿するまでを完遂するための計画を立て直し研究を推進する。
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Strategy for Future Research Activity |
タモキシフェン投与によりLRG過剰発現した群で、タモキシフェン非投与群よりリン酸化CREBの発現が増加した理由を、今後検証する必要があるとともに、24週齢・48週齢への生育、およびタモキシフェン投与、サンプル採取、さらには各週齢における行動実験まで、来年度に拡張していく。 また、脳標本において脳萎縮や脳室拡大を形態学的に評価し、リン酸化CREB以外にも大脳および海馬において病態を反映する免疫組織学的所見を解析する。つまり、酸化ストレスマーカーとして8-OHdG・4-HNEの発現増加、アストロサイト障害として電子顕微鏡を用いたアストロサイトの減少や形態異常の観察、シナプス障害マーカーとしてSynaptotagminの発現減少を示したい。 今後の研究計画にある未完遂の項目として、各モデル群における記憶機能および運動機能を評価するための、Y字迷路試験およびモリス水迷路試験による行動試験である。施行時期は各々タモキシフェン投与完了の16週後とし、加えてLRG暴露期間の違いによる影響を評価するため各群48週齢にて同様の行動実験を施行する。対照は同週齢の非タモキシフェン投与群とする。行動実験終了後に適切な方法で安楽死させ、摘出した脳検体を追実験用の標本作製または蛋白抽出のため適切に保管する。
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Causes of Carryover |
研究計画遅延のため、抗体・試薬等の購入を実施していないことによる余剰分を計上した。今後研究の進捗に合わせた必要資材の購入に充てる。
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