2021 Fiscal Year Research-status Report
脳動静脈奇形の発達過程を探る:in vivo血管新生モデルと臨床検体の統合解析
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20K17948
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
伊藤 行信 秋田大学, 医学部附属病院, 医員 (80837732)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脳動静脈奇形 / 遺伝子発現解析 / RNA-seq / miRNA-seq / In vivo 血管新生モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
脳動静脈奇形(AVM)は、現在もその形成過程やメカニズムについての大部分が不明のままである。これまでにも様々な研究がおこなわれているが、ヒト病理検体を用いた解析のみでは摘出時点の分子異常しか解明できず、AVMの形成に至る分子異常の経時的変化を解析することは困難である。本研究では、AVMの形成過程における遺伝子発現やmiRNA発現の経時的変化について、申請者らが発見したin vivoウサギ血管新生モデルとヒトAVM切除検体の両者での遺伝子発現解析およびmiRNA発現解析を行い、それらの比較解析や数理解析により、AVMの発生と発達に関与する有意な分子異常の同定を目指す。 ①ウサギAVMモデルでの遺伝子発現およびmiRNA発現の経時的解析 ウサギAVMモデルを経時的に作成し、cDNAマイクロアレイ解析およびmiRNA発現解析を行い、その経時的変化を明らかとする。解析はControl, 3, 7, 14, 28, 84の6群を予定しており、これまでにこれらの標本の作成・収集は完了し、Control, Day3, 84での解析は終了した。2022年度は引き続きDay7, 14, 28での遺伝子発現解析を行い、解析作業を継続していく。 ②ヒトAVM凍結標本での遺伝子発現解析およびmiRNA発現解析 ヒトAVM凍結標本での遺伝子発現解析およびmiRNA発現解析を行う計画であり、秋田大学附属病院および秋田県立循環器・脳脊髄センター、北里大学脳神経外科学講座の3つの機関でのAVM凍結標本の収集にあたっている。新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、現在までに収集できた症例数は2例と見込みよりも少ない。今後も継続して標本を収集するとともに、これまで収集できた症例について遺伝子発現解析を行っていく方針である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒト脳動脈奇形の標本収集については、秋田大学脳神経外科学講座、北里大学脳神経外科学講座および秋田県循環器・脳脊髄センターとの共同研究として行っている。倫理申請などが完了し、現在標本収集中であるが、新型コロナウイルス拡大の影響もあり、現在までに動静脈奇形2例と正常脳血管2例の収集にとどまっている。新型コロナウイルス感染症の拡大による影響が手術例および剖検例にも及んでいる。2022年度中にも採取を継続するとともに、並行して遺伝子発現解析を継続していく予定である。 また、ウサギ血管新生モデルでの遺伝子発現解析については順調に進んでいる。現在までにControl, Day3, 84での遺伝子発現解析が終了した。ウサギの感染症が発生したこともあり、標本収集が一時ストップしていたが、現在は再開された。今後はDay7, 14, 28での標本の採取を少し行いつつ、解析を順次進めていく予定である。これまでに得られた解析結果からはLGR5などの遺伝子発現か見られた。ウサギ新生血管やヒト動静脈奇形のパラフィン標本での免疫組織学的検討でもLGR5の発現が確認されている。セルソーターで血管内皮細胞のみを分取し、LGR5などの発現の有無について細胞レベルで検証することを予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのウサギ血管新生モデルでの研究から血管内皮および中膜平滑筋に有意な遺伝子発現があるものと考えている。この部分を重点的に調べることにより、血管新生に関与する重要な遺伝子を同定できるものと期待している。現在までに収集したヒト脳動静脈奇形標本およびヒト正常脳血管標本から血管内皮および中膜平滑筋のみを採取すべく、マイクロダイセクションによる抽出を検討している。これまでに収集できた標本をマイクロダイセクションで血管内皮および中膜平滑筋を採取する予定である。それらから抽出したTotal RNAを用いて網羅的遺伝子発現解析(RNA-seq、miRNA-seqなど)を行う予定である。それと同時に過去の手術検体標本を用いて免疫組織学的検討も行っていく。 ウサギ血管新生標本については今後はDay7, 14, 28での解析を予定している。標本の作製・収集については概ね終了している。一部足りない症例については作製を進めながら、今後は遺伝子解析を行っていく予定である。
ヒト脳動静脈奇形およびウサギ血管新生標本の遺伝子解析を2022年度の8月までには完了させ、その後はそれらを統合して解析を行っていく予定である。両者に共通する遺伝子発現などについてはパラフィン標本などを用いて免疫組織化学染色やRT-PCRなどで検証していく予定である。
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Causes of Carryover |
当初は2020年度中からヒト動静脈奇形標本およびウサギ血管新生標本で網羅的遺伝子発現解析を順次行っていく予定であった。しかし、新型コロナウイルスの拡大の影響もあり、それらの標本収集に少し時間がかかってしまった。2020年度および2021年度の経費に網羅的遺伝子発現解析を計上していたが、ほとんどできなかったため、次年度使用額が生じた。 標本収集はまだこれからも進めていくが、2022年度は順次遺伝子発現解析を行っていく予定である。ヒトAVM標本についてはRNA-seq解析およびmiRNA-seq解析を予定しており、ウサギ血管新生標本についてはcDNAマイクロアレイ解析を予定している。繰り越した経費はこれらの遺伝子発現解析の費用として使用する予定である。また、ヒトAVM標本およびウ サギ血管新生標本から得られた結果から共通する遺伝子を同定し、RT-PCRや免疫染色などでその発現について検証していくことを予定している。それらのプライマーや抗体などの購入費用に充てることを予定している。
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