2022 Fiscal Year Research-status Report
脊髄腫瘍の手術戦略決定に有用な術前、術中H3F3A遺伝子プロファイリング
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20K17962
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
永島 吉孝 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (20867684)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | H3F3A遺伝子変異 / 脊髄アストロサイトーマ / ddPCR / i-densy解析 / 脊髄星細胞腫 / 脊髄髄内腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年多くの脳脊髄腫瘍では特定の遺伝子異常が正確な診断、治療方針の決定に重要な分子マーカーとなっている。今後は脳脊髄腫瘍の手術戦略の検討には、これまでの画像情報、臨床情報等に加えて、遺伝子プロファイリング情報が重要な役割を果たすと考えられる。このような知見は2021年のWHO分類にも反映された。若年者に好発し、予後不良である脊髄アストロサイトーマではH3F3A遺伝子変異が強力な診断マーカーであるとともに予後不良マーカーであることが明らかになった。脊髄髄内腫瘍においては、術中に取れる検体が少ないために術中迅速病理検査の正確性が低いことが以前から問題となっている。術前、術中に脊髄アストロサイトーマのH3F3A遺伝子変異を同定することができれば、正確な診断を考慮した手術戦略の決定が可能になると考えた。これまでに名古屋大学医学部脳神経外科学教室で保存した、髄液検体と腫瘍検体を冷凍保存したものからDNAを回収し、バイオアナライザーで定量しH3F3A変異の有無を確認した。また、実際の手術中に採取した検体からH3F3A変異の有無の検索を実施した。迅速解析については、蛍光Qプローブを用いたi-densy(アークレイ社)で行った。約90分で遺伝子の解析を行うことが可能である。実際の検体を使用し、1mgで十分検出が可能であるとの結果を得た。本方法は一塩基多型を高感度かつ、迅速に検出できるシステムであり、ホットスポット変異に対して極めて有用な手段と考えられる。H3F3Aは27番目のリシン(K27)、34番目のグリシン(G34)のみに変異を認めることが明らかになっており、本方法で解析可能と考えた。また、脊髄星細胞腫症例数がかなり少ないため、H3F3A遺伝子変異だけではなく他の遺伝子変異についても不確かなことが多い。そのため、sanger sequencingなどを用いて脊髄星細胞腫の遺伝子異常の特徴を解明することも本研究の課題とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
名古屋大学医学部附属病院脳神経外科にて手術を施行した脊髄髄内腫瘍において、H3F3A K27M変異の術中高感度迅速診断法を行い、遺伝子変異の同定を行った。以前のデータに加え、患者背景、術後経過などを比較した。さらに、IDH変異を有するものや、特定の遺伝子変異を持たない脊髄グリオーマの予後についても名古屋大学医学部附属病院脳神経外科のデータを集積し比較検討を行っている。よって当初の計画どおり研究を遂行できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は更なる集積を行い、遺伝子変異の確認を行うことで術中迅速検査の手技確立を目指す。また、H3F3K27M変異以外にもATRX遺伝子、p53異常あいるはIDH変異 など他の変異についても解析し、同様にその術前、術中遺伝子解析法の確立を目指す。本研究より遺伝子プロファイリング情報を加味した脊髄アストロサイトー マの手術戦略の確立を目指す。また、アストロサイトーマのみならず、他の脊髄腫瘍でも遺伝子変異に基づく治療戦略を確立する。名古屋大学医学部附属病院脳神経外科の過去の脊髄髄内腫瘍のデータを用い、比較検討を行っていく。
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Causes of Carryover |
現在、集積した検体の解析に加えて、対照群として脊髄星細胞腫以外の疾患でも解析を行っている。また論文報告に必要な追加実験のため、次年度使用が生じた。これらの内容をまとめ、次年度の成果発表に未使用額を使う予定である。
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