2020 Fiscal Year Research-status Report
ワーラー変性における細胞内エネルギー代謝の病態解明
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20K17967
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
竹中 朋文 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (60869527)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ワーラー変性 / シュワン細胞 / ATP |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、坐骨神経の損傷遠位での軸索変性をATP代謝の観点から観察・評価することで、切断後のATP量の変化やATPと軸索変性の関連性を明らかにすることを目的とした。 まず末梢神経損傷における、損傷遠位細胞内ATPの詳細な時間的空間的変化を明らかにすべく、GO-ATeam2 Tgラット坐骨神経切断モデルにおける、神経切断遠位の細胞内ATPを観察した(切断0-6時間後、24時間後、48時間後、14日後)。結果、切断遠位の細胞内ATPは切断2週間後に至り保持されていることが示された。一方、組織学的評価(トルイジンブルー染色・NF-H免疫染色)では、切断1日後より切断遠位の軸索変性が認められた。 組織学的な軸索変性の進行にもかかわらず切断遠位で細胞内ATPが保持されているため、我々は電子顕微鏡によるミトコンドリアの形態評価を行ったところ、シュワン細胞内のミトコンドリアが切断2週間後においても保持されていた。 そこで、GO-ATeam2 Tgマウスに上記と同様のモデルを作成し、二光子顕微鏡による観察、組織学的評価(トルイジンブルー染色・S-100B免疫染色)を行ったところ(切断前・24時間後・48時間後・7日後)、切断7日後においてもシュワン細胞のATP値が保持されていることが示された。 以上の結果から、切断遠位のATP産生は主にシュワン細胞によるものだと考えられた。シュワン細胞は軸索の恒常性維持や軸索変性におけるオートファジーに関与することが報告されており(Beirowski, B. et al. Nat. Neurosci, 2014.)、そのATP産生と軸索変性との関連が注目された。 上記内容は、第44回日本脳神経外傷学会(WEB開催: O20-1)で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GO-ATeam2 Tgラット坐骨神経切断モデルによる蛍光実体顕微鏡の観察は、特に神経切断48時間後、14日後において組織癒着等による撮影困難の可能性が危惧されたが、問題なく完遂できた。 また、二光子顕微鏡の観察は当初ラットで行う予定であったが、実験動物のサイズとしてより適切と考えられたたマウスに変更した。当該マウスの繁殖にやや時間を要したが、既にモデル作成はラットにて習熟していたため、実験の遅れには影響しなかった。 筋電図による電気生理学的評価は実施しなかったが、組織学的所見で経時的な軸索変性所見が示されたため、不要と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は切断遠位の坐骨神経(切断前・切断48時間後)を採取、LC/MSによる損傷遠位のATP代謝(TCA回路・解糖系)、NAD+代謝の測定を行い、損傷遠位におけるエネルギー代謝変化を検討する。 さらに上記実験で得られた結果を参考に、TCA回路もしくは解糖系に対する阻害薬投与を行い、蛍光実体顕微鏡・二光子顕微鏡での観察に加え組織学的評価を実施し、ATP量や組織学的所見への影響について評価を予定している。
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Causes of Carryover |
令和2年度においては、実験動物(GO-ATeam2 Tgマウス・ラット)の繁殖、組織学的評価の標本作成、試薬費用が生じたが、実験モデルが確立していたため上記次年度使用額が生じた。 令和3年度では主に質量分析、阻害薬実験における試薬や標本作成費用に用いる予定である。
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Research Products
(1 results)