2021 Fiscal Year Research-status Report
日本人における逆置換型人工肩関節の研究~肩甲骨形態からインプラントデザインまで~
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20K17988
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
橋本 瑛子 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (30836747)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 反転型人工肩関節全置換 / 新鮮凍結屍体 / 術後不安定症・脱臼 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に従い、さらに追加実験を行った。 ②新鮮凍結屍体を用いた動作解析法による術後脱臼の検討 反転型人工肩関節全置換術後で最も多い合併症の一つが不安定症・脱臼である。前年度の研究においては、人工関節のステム頚体角および肢位と不安定性の関係を報告した。また、術後不安定症・脱臼に関与する要因として関節周囲の軟部バランスが報告されている。実臨床においては、破綻した腱板の補強として腱移行を追加することがしばしばあり、軟部バランスの観点から反転型人工肩関節に腱移行を追加した際の腱移行位置による安定性の評価を施行した。新鮮凍結屍体8上肢に人工関節を設置し、外旋筋再建として広背筋および大円筋の腱移行を追加した。腱の移行位置を水平断・垂直断により6ヶ所に設定し、さらに肩甲下筋の修復の有無で、力学試験機による牽引を行い前方脱臼に要する牽引力により不安定性を評価した。上肢の肢位によらず、垂直断で小円筋の付着位置に近い近位レベルへの移行で牽引力は有意に高値で安定していた。水平断による腱移行位置による牽引力の有意差は認めなかった。また、肩甲下筋の修復を行うと、牽引力は有意に高値となり、関節安定性に寄与していた。反転型人工肩関節に外旋筋再建として腱移行を追加する際は、垂直断において小円筋付着部に近いより近位の位置への移行を心がけ、さらに肩甲下筋の修復を行なうことが術後不安定症・脱臼リスクを下げる可能性がある。また、肩甲下筋修復不能な重症の腱板断裂症例においては、安定性において垂直断遠位への移行は避ける必要があり、特に腱移行位置に注意が必要と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度の研究計画に加えて、臨床に準じ、軟部バランスを加味した術後安定性の評価が必要と考え上記追加実験を施行した。こちらは当初の計画に追加したものであり、2021年に行い当初の研究計画よりは遅れたが、順調に実施・進展した。 2021年度に予定していた有限要素解析法に現在取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度以降の研究計画に予定した、有限要素解析法によるインプラントの応力分布の検討を継続する。肩甲骨関節窩形態の研究結果を踏まえて、肩甲骨インプラントの設置位置や角度による肩甲骨関節窩への応力分布を検討する。また、上腕骨側ステムに関しては、インプラントマッチングを行い、ステムサイズやステムのタイプ(On-lay、In-lay)、内外反の設置位置による応力分布を検討する予定である。 また、有限要素解析法のインプラント設置による検討に先立ち、実臨床でのインプラント設置位置での臨床成績の検討が必要と考え、追加研究として行なう予定である。2020年度に行った肩甲骨関節窩のinclinationの計測法に従い、肩甲骨コンポーネントの設置角度と臨床および画像成績(スカプラノッチングなど)の関連を、当方で施行した反転型人工肩関節200例において計測し報告を予定している。これにより、インプラント設置が与える影響が、臨床的側面と、有限要素解析法による応力分布の基礎的側面の両面から捉えられると期待している。
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Causes of Carryover |
コロナ禍に伴い、予定していた国際学会での学会活動・報告がなくなったこと、検者協力を得ての画像研究が変更となったこと、実臨床に準じた追加研究を予定したため、研究延長の依頼をする運びとなった。研究計画の大きな流れは変更がないため、学会活動の再開および新鮮凍結屍体を用いた人工関節の牽引実験および有限要素法でのPC解析等を中心に次年度も研究を引き続き継続していく予定である。
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