2022 Fiscal Year Research-status Report
日本人における逆置換型人工肩関節の研究~肩甲骨形態からインプラントデザインまで~
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20K17988
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
橋本 瑛子 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (30836747)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 反転型人工肩関節全置換術 / 術後肩峰骨折 / 肩甲骨コンポーネント / 有限要素解析法 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に従い、さらに追加実験を行った。 反転型人工肩関節全置換術が本邦に導入され9年を迎えた。本邦で使用可能なインプラントは全て諸外国メーカーによる製品であり、短中期成績の評価が可能となった昨今においては、日本人の体格差によるインプラントサイズのミスマッチ、コンセプトの改良が望まれている。そこで、本年度は有限要素解析法のインプラント設置による検討に先立ち、追加研究として反転型人工肩関節全置換術の術後短中期における合併症の研究とインプラント設置と臨床成績の検討を2020年度に行った肩甲骨関節窩のinclinationの計測法に基づき詳細に評価した。 近年、術後の予後不良因子として疲労骨折である肩峰骨折に着目されている。当方で施行した反転型人工肩関節のうちその頻度は20/377肩(5.3%)だった。諸外国の報告と同様の頻度であったが、骨折部位が臨床成績を左右し、特に術後比較的早期に発症する肩甲棘基部骨折に注意を要すると考えられた。さらに、インプラントマッチングモデルを完成させ、有限要素解析法による肩峰骨折への応力分布を検討した。上肢下垂位においては実臨床に一致した骨折部を確認した。さらに、201肩を対象とし3D補正の術後CTを用いコンポーネントの設置位置(inclination、height、version)を計測し、術後成績との相関を検討した。設置は、平均4.4°上方傾斜、1.9mm下方設置、0.7°前捻だった。設置位置と可動域の相関は、inclinationで可動域と臨床スコアで上方傾斜残存角度に比較的強い負の相関を認め、挙上不良におけるinclinationのカットオフ値はAUC0.85・上方傾斜11.4°だった。反転型人工肩関節の肩甲骨コンポーネントの設置において約10°以上の上方傾斜の残存は、術後挙上角度を減じ成績不良となる為、肩甲棘基部と平行となる下方傾斜を目標とした術前計画や術中設置手技に十分注意を要する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度の研究計画は全て終了し、2021年度以降に予定していた有限要素解析法に現在取り組んでいる。インプラント設置が及ぼす実臨床での短中期での臨床成績や合併症のデータに基づいた検討が必要であると考え、上記追加研究を行なった。こちらは当初の計画に追加したも のであり、2022年に行い当初の研究計画よりは遅れたが、順調に実施・進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度以降の研究計画に予定した、有限要素解析法によるインプラントの応力分布の検討を継続する。インプラントマッチングモデルが確立できたため、合併症で重要と考えられている肩峰骨折の応力分布の検討を上肢の肢位や三角筋の牽引力を変化させ、より臨床にそくした検討を継続したいと考えている。さらに、体格差から生じたと考えられる現在の本邦での問題点を解決すべく、サイズのミスマッチから引き起こされると考えられるインプラント牽引距離の与える影響やステムサイズにも着目して有限要素解析法の検討を行う予定である。肩甲骨側においては、肩甲骨関節窩形態の研究結果を踏まえて、肩甲骨インプ ラントの設置位置や角度による肩甲骨関節窩への応力分布、インプラントフェイラーを引き起こす要因を検討する。インプラント設置やサイズが与える影響が、臨床的側面と、有限要素解析法による応力分布の基礎的側面の両面から捉えられると期待している。
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Causes of Carryover |
本年度追加研究を行い、次年度に最終の有限要素解析法による画像研究を継続して行うこととなったため、パソコン周囲・画像解析ソフトのメンテナンス含めた研究費の使用を予定している。さらに、研究成果の報告として、海外学会での発表機会を2023年度に複数予定しているため、そちらの参加費・旅費が引き続き必要と考える。
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Research Products
(8 results)