2020 Fiscal Year Research-status Report
老化細胞と組織線維化を標的とした腱変性および腱損傷の新規治療の探索
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20K17999
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
生田 祥也 広島大学, 病院(医), 助教 (50856086)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 腱 / 細胞老化 / 線維化 / 変性 / 修復 |
Outline of Annual Research Achievements |
腱の退行性変化「変性」はアキレス腱断裂の主たる原因である。アキレス腱断裂治療における最大の問題点は再断裂であるが、腱損傷後の修復過程において増殖期では周囲組織由来の細胞による過度の瘢痕組織形成と3型コラーゲンの沈着が生じる。そして腱組織による再生ではなく、瘢痕組織による修復をもたらし、腱の剛性増加と力学的な強度の低下が再断裂のリスクとなる。近年、老化した細胞が分泌する炎症性サイトカイン、ケモカイン、細胞外マトリクス分解酵素や増殖因子が周囲細胞の老化をさらに誘発し、肝臓、腎臓、肺などの組織の線維化を誘導することが明らかとなり、その重要性が認識され始めている。一方で腱組織における変性や線維化への影響は不明である。また腱修復における過度の線維化・瘢痕形成が修復腱の力学的強度を低下させ、再断裂のリスクとなることが示唆されているが、この線維化・瘢痕形成を直接標的とした腱損傷の治療はこれまでにない。本研究では、①腱の変性、②腱修復過程の瘢痕形成に注目して腱での細胞老化と組織線維化に関する分子機構解明、さらには老化細胞除去薬、線維化抑制薬を使用した新たな腱修復治療を探索する。 老化促進マウスであるSAMP8とコントロールマウスであるSAMR1の自然加齢モデル(48週齢)のアキレス腱変性モデルおよびC57/BL6マウスのアキレス腱損傷モデルを作製し老化、変性、瘢痕形成に注目してアキレス腱の形態組織学的解析を行い、変性モデルにおける特徴的な所見と腱損傷モデルにおける経時的な修復パターンを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①マウス腱変性モデルの探索、腱変性の分子機構の解明 SAMP8の腱変性モデル、C57/BL6マウスの腱損傷モデルによる形態組織学的評価を実施しており、引き続き同モデルを用いて腱組織のRNAによる遺伝子発現解析、生体力学的試験による腱破断強度、歩行動作のビデオ解析による機能的評価を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
②老化細胞除去薬による腱変性の治療 SAMP8での腱変性モデルに対して老化細胞除去薬を投与し、腱変性の抑制効果を検討する。またSAMP8や老齢マウスより培養した腱前駆細胞に老化細胞除去薬を添加して、細胞内の腱関連遺伝子や老化、線維化マーカーの遺伝子発現を確認する。 ③抗線維化薬による腱修復過程での過度の瘢痕形成を標的とした治療の探索 腱組織での線維化抑制を標的とした腱修復について、これまでに特発性肺線維症や肝線維化 などで臨床試験に使用されている薬剤から選定した3種類の薬剤をC57/BL6マウスのアキレス腱損傷モデルに投与して、免疫染色を含めた修復組織の組織学的評価を行う。
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Causes of Carryover |
おおむね実験が順調に進んだため、残額を翌年度に繰り越すことにした。次年度の実験試薬など消耗品に充てていく予定である。
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