2020 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of the mechanism of hip joint stability for safe spreading of hip arthroscopic surgery
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20K18014
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
宇都宮 啓 産業医科大学, 医学部, 助教 (60760387)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 股関節安定性 / バイオメカニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度に実施したバイオメカニクス研究によって、研究目的①「関節包切開が股関節不安定性にどの程度寄与するか」に関する実験が完了した。論文も執筆が完了し、現在、医学雑誌に投稿して査読を受けている。 研究では新鮮凍結屍体股関節を16股関節使用し、6 degrees of freedomロボットアームを使用して解析を行った。その結果、(1)関節唇損傷を作成した股関節では、重大な関節不安定性が生じなかった。(2)5cmの関節包切開を行い、腸骨大腿靭帯を完全に損傷した股関節では、骨頭移動距離が4mmを超える重大な関節不安定性を生じた。(3)3cmの関節包切開で、関節包を一部切開し、腸骨大腿靭帯を温存した股関節では、重大な股関節不安定性は生じなかった。(4)腸骨大腿靭帯をストレッチすると、わずかな不安定性が生じた。 これらの結果は、関節包切開が股関節の安定性に重要な変化をもたらすことを明らかにした。すなわち、腸骨大腿靭帯を完全に損傷するような関節包切開を行うと、重大な股関節不安定性を引き起こすため、手術の際には避けることが望ましいことが示唆された。関節包切開は3cmまで、腸骨大腿靭帯を温存する形であれば重篤ではなく、この程度の関節包切開で手術を行うことが重要と考えられた。 上記の結果を元に、研究目的②「関節包切開による不安定性が、関節包修復によってどの程度改善するか」の計画が完了した。Power analysisにより、10股関節の使用が妥当と考えられた。研究目的②では、関節包を5cm切開した後に、通常の方法による関節包縫合と、近年報告されているより強固な関節包縫合の方法を用いて関節包修復を行い、関節包修復によって安定性が獲得されるか否か、また、修復方法によって結果が異なるかを調査する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1年目の目標は、研究目的①「関節包切開が股関節不安定性にどの程度寄与するか」に関する実験が完了を完了することであった。2年目に論文を執筆し、医学雑誌に投稿して査読を受けることを計画していた。また、2年目に研究目的②「関節包切開による不安定性が、関節包修復によってどの程度改善するか」の計画を行い、3年目に実施することを検討していた。 今回、予想以上に研究目的①の実験がスムーズに進んだため、2021年度に予定していた内容もほぼ完了し、次の実験に移る準備が整った。予想より実験がスムーズであったことの要因として、(1) 予備実験がスムーズに進んだこと、(2) 新鮮凍結屍体が予想以上に早く集まったこと、などが考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、2022年度に実施する予定であった研究目的②「関節包切開による不安定性が、関節包修復によってどの程度改善するか」の実験を行い、その結果をまとめることを目標とする。もし可能であれば、結果を論文化し、投稿するところまで進めたい。ただし、新型コロナ感染症拡大の影響で、新鮮凍結屍体の供給に影響が生じており、進捗に支障を来す恐れがあるため注意して計画を進めていく。また、研究目的③「関節包修復の方法の差異が、関節鏡視下股関節唇形成術の術後成績に与える影響を解析すること」の臨床研究も同時に進めることを計画している。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の拡大に伴い、予定していた海外移動ができなかった。このため、(1)国際学会への出席、(2)研究打ち合わせや実施のための渡米、(3)米国研究者の招聘と共同研究の実施、などに計上していた予算を使用できなかった。このため、一部の予算はweb会議で急遽使用することが必要となった備品などに使用し、(1)-(3)は新型コロナ感染症が沈静化した2021年度以降に使用可能と見越して、次年度使用額を発生させる計画とした。
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