2023 Fiscal Year Research-status Report
Mechanism of Chronic Inflammation of Tenocyte and Tendon through Transient Receptor Potential Channels
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20K18036
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
亀田 拓哉 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (50864005)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | tendinopathy / TRP / inflammation / tendon / TRPA1 |
Outline of Annual Research Achievements |
弾発指、上腕骨外側上顆炎、肩関節腱板炎、アキレス腱炎などの腱障害は日常診療で頻繁に遭遇するが、根本的な薬物治療はない。Transient Receptor Potential チャネル(以下TRPs)は様々な環境に反応し、細胞内Ca濃度を上昇させることで、下流にある細胞応答を引き起こす役割を持つ。本研究では腱障害においてTRPチャネルがどのように慢性炎症に関与しているのかを解明する。 R2年度では、ヒト腱細胞を購入し、培養が可能であることを確認できた。 R3年度では、実験計画Ⅰとして、培養した腱細胞にサイトカインを暴露させ、その細胞群からRNA抽出を行い、リアルタイムPCR法を行うことで、標的遺伝子であったTRPs、特にTRPA1の発現が有意に高いことが明らかとなった。更に、TRPA1を作動させる物質を炎症性サイトカインと組み合わせて添加した細胞群で、細胞外基質の修飾遺伝子が変化する事をとらえた。また、手術の破棄検体から実際にヒト腱細胞の分離培養が可能となった。 R4年度では、炎症下におけるヒト腱細胞を免疫染色し、TRPA1タンパク発現が増強していることを確認した。さらにTRPA1を作動させる物質を炎症性サイトカインと組み合わせる実験系で、ELISA法により、培養液中の細胞外基質を修飾させるタンパクが変動する事をとらえた。また、ヒト腱細胞におけるCaイオン流入が、炎症環境下においてのみ、TRPA1作動物質により引き起こされることをとらえられた。 R5年度では、実験計画IIとして、ラットを用いたアキレス腱炎モデルを作成し、歩行解析、組織HE染色によりその妥当性を評価した。また、実験計画IIIとして、ヒトの外側上顆炎検体を収集した。TRPA1を作動させる物質により、アキレス腱炎モデルラットの歩行やアキレス腱での関連遺伝子発現がどのように変化するかの実験系について倫理委員会申請を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
R2年度(初年度)は研究責任者の異動直後であったこともあり、臨床業務との兼務にエフォートの予想する事が困難であり、予定していたエフォートを投入できなかった。しかし、R3年度以降では、所属機関の協力の元、業務の調整を行い、エフォートを予定した割合に近づける事ができ、全体としてプロジェクトが進行した。 具体的には、培養実験系、RNA抽出、PCR、ELISA、動物実験系、染色など、実際の実験を計画、実施する時間が相対的に増え、検体も比較的よいペースで収集できた。 ただし、PCR機器の不調などもあり、最も理想的な進行状況には至っていない。 なお、研究成果の発表について国際学会も含め、予定より遅延したものの行うことができた。論文については、現在作成中であるが、進行中の動物実験の結果を確認次第、完成に向かう予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、実験計画の実験Ⅱの通り、ラットアキレス腱炎モデルに対し、TRPA1作動薬を投与した際の変化について、行動学的検討、リアルタイムqPCRや免疫組織学評価を行うことで、腱の慢性炎症における行動学的な変化や組織学的な変化を評価する。これにより、これまでの実験で判明した炎症によるTRPA1の発現変化、機能的変化や、TRPA1の作動による変化が、生体レベルで腱障害にどのような変化を与えるかを評価することができる。さらに、実験Ⅲの通り、テニス肘(外側上顆炎)など、腱障害の検体を採取し、これの遺伝子発現量評価を行い、実際のヒトの腱障害におけるTRPや細胞外基質関連遺伝子の発現変化を捉える。 以上の結果をもとに、国内・国際学会発表、論文作成を行う。
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Causes of Carryover |
初年度が異動直後であったため、臨床業務との兼業によりエフォートのバランスをとるのが難しく、実験計画の遅れがあったため。また、リアルタイムPCR実験が、機械の不調により滞ったため。次年度の各実験の試薬、実験動物、旅費などに使用する予定である。
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