2021 Fiscal Year Research-status Report
新規低弾性チタン合金であるTi-Nb-Sn合金を用いた骨折治療インプラントの開発
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20K18051
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
上村 雅之 東北大学, 大学病院, 助教 (80758962)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | TiNbSn合金 / プレート / 骨折治癒 |
Outline of Annual Research Achievements |
市販のAOミニDCP 8穴プレート(Ti6Al4V合金製、ヤング率100.0GPa)と同型のプレートをTiNbSn合金(ヤング率49.1GPa)で作成し、日本白色家兎(オス)を用いた脛骨骨折モデルにおいて骨折治癒過程と骨強度の違いを評価した。 前年度は術後4週時点でのマイクロCTによる画像評価を行っており、術後8週時点での評価を追加した(各群6匹)。髄内仮骨の体積はTiNbSn合金群で有意に小さく、仮骨架橋幅を評価した結果、全体および髄内の架橋幅はTiNbSn合金群が有意に小さかった。TiNbSn合金群で先行した仮骨形成が成熟骨に置き換わった過程を示したと考えられる。 術後4週目時点でヘマトキシリン・エオジンとアルシアンブルーで染色した組織標本を作成し、組織形態計測を行った(各群6匹)。仮骨内に新たに形成された新生骨の定量的評価において、TiNbSn合金の新生骨形成量は仮骨全体および髄内仮骨において有意に大きかった。またTiNbSn合金群はプレート設置面側の骨切り部の新生骨形成量が有意に大きかった。仮骨内の残存軟骨組織の定量的評価において、両群間に有意な差はみられなかった。 次に、組織切片のオステオカルシン免疫化学染色を行い、仮骨全体、髄内および骨外におけるオステオカルシン陽性細胞数を定量的に評価した。TiNbSn合金ではオステオカルシン陽性細胞が有意に多かった。 以上の結果から、TiNbSn合金製プレートは術後早期の骨折治癒過程における髄内仮骨およびプレート設置面側の仮骨形成を促進し、骨強度の早期回復を誘導したと考えらえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、ウサギを用いた実験によってTiNbSn合金製プレートの骨折治癒促進効果を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度および2年目の研究に用いたプレートは、スクリューによる圧着を介した摩擦力で骨折部の固定力を得るタイプ(コンベンショナルプレート)であった。近年、スクリューヘッド部分とプレートホールがねじ山機構によって固定され、従来よりも角度安定性に優れるロッキングプレートの臨床使用が広まっている。ロッキングプレートにおいては、Ti-Nb-Sn合金の低ヤング率という特性が骨折治癒をさらに促進することが期待されるため、今後はTi-Nb-Sn合金でロッキングプレートを作成し、同様のモデルによる骨折治癒の評価を行う予定である。
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Causes of Carryover |
学会がオンライン開催となり、学会参加にあたって旅費が発生しなくなったため。翌年度の動物実験における物品費として使用する予定である。
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