2020 Fiscal Year Research-status Report
骨肉腫を標的としたエクソソーム様細胞外小胞化ナノマテリアルを応用したDDS開発
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20K18058
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
傍島 淳 信州大学, 医学部附属病院, 特任助教 (00770760)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エクソソーム / カーボンナノマテリアル / ドラッグデリバリーシステム / 骨芽細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
カーボンマテリアルは骨組織に非常に親和性が高く、整形分野において骨組織の修復に非常に適したバイオマテリアルである。そして、細胞に取り込まれるナノサイズではその機能にドラッグデリバリーシステム(DDS)のキャリア機能も付加することが可能である。本申請では我々が発見した現象であるカーボンナノマテリアルの一つであるカーボンナノホーン(CNH)のエクソソーム様細胞外小胞体化を基盤技術として、エクソソームの組織特異性とCNHの薬物担持能力、及び骨修復能力を活かしたPPDSの基盤を開発する。 我々がこれまでに確認していたCNHのエクソソーム様細胞外小胞体化はマウスRaw264マクロファージ様細胞であり、異物に対して貪食能がある細胞であった。一般的にファゴサイトーシスされた異物はファゴソーム内で消化・分解されることが知られており、この時に生分解されないものはエクソサイトーシスされると言われていた。本年度、まず、このナノマテリアルのエクソソーム様細胞外小胞体化が貪食細胞以外で起こるかを確認するためにターゲットとなる骨肉腫細胞の近傍に存在する正常骨芽細胞を想定した細胞で確認する事とした。用いた細胞はMC3T3-E1マウス前骨芽細胞であり、この細胞にCNHを取り込ませ、このCNHが細胞内を経由してエクソソーム様細胞外小胞体化する事を形態学的に確認できた。また、骨肉腫治療を想定した場合、CNHに抗がん剤を負荷したものを一度、細胞に取り込ませてエクソソーム様細胞外小胞体化させるよりも、ナノマテリアル自体が抗がん作用できるものの方がより簡便な治療法ができる事から、現在、CNHに代わり、がんの温熱療法に使えるナノフェライトによるエクソソーム様細胞外小胞体化を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
癌治療のためのDDSで最も困難なところは「癌細胞にだけ届ける」という技術である。このターゲッティング技術に我々はエクソソームの組織特異性を活用としている。エクソソーム研究は腫瘍細胞が放出するエクソソームを診断に使う事を目的とした研究が先行して行われており、放出されたエクソソームを医療応用する研究は活発ではない。これはエクソソームにはタンパク質やRNA等の生体高分子が入る、という先入観から進められている医療応用のため、エクソソーム内への薬物の導入がネックとなっているためである。しかし、ナノマテリアルをエクソソーム化できるのであれば、難生分解のナノマテリアルを使う事によって標的細胞に対する宿主細胞でナノマテリアルをエクソソーム化する事で標的細胞だけに対するDDSが可能となる。今回、貪食細胞以外で人為的に細胞によるナノマテリアルのエクソソーム化を狙って行い、それを形態学的に確認できたことは非常に大きな一歩であり、我々が名付けた「ピンポイントデリバリーシステム(PPDS)」が可能である事を証明できたと言えるからである。
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Strategy for Future Research Activity |
PPDSを完成するためにはあと2つの大きな山がある。1つは薬物などを担持させたナノマテリアルを無害の状態で宿主細胞に負荷させるかという問題とエクソソーム化されたナノマテリアル表面に通常のエクソソームと同様の機能が保持されているかどうかである。この2点を今後検討する必要がある。1つ目については本申請が骨肉腫をターゲットにしたがん治療であることから、抗がん剤をナノマテリアルに負荷する技術開発よりもがん治療に用いる事ができるナノマテリアル自体をエクソソーム化させる方がはるかに簡便である。そこで、形状が特徴的であるCNHと同様にエクソソーム化されるかをナノフェライトで検討し、その可否を明らかにする。 エクソソーム化されたナノマテリアルの有効性はまず、ミリセルのようなセルカルチャーインサートを用い、標的細胞をウェル内に、宿主細胞をインサート内で培養し、ナノマテリアルを取り込ませた宿主細胞から分泌されたエクソソーム化ナノマテリアルが標的細胞に取り込まれるかを確認する。この確認がとれた後、開発しなければいけない技術はエクソソーム化ナノマテリアルの特異的回収方法である。ナノマテリアルを取り込んだエクソソームは普通のエクソソームよりも軽いと思われるため、その重さの違いを利用した回収方法を検討する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍となり、出張による学会発表がなくなった事や本学でもコロナの緊急事態宣言によって人件費負担が減ったこと、実験自体ができる期間が短くなり、それに伴って実験を遂行するための実験動物を初め、消耗品等の購入が予定よりも少なくなってしまったことが大きな理由である。次年度は実験をより効率的に行うために、少し高価ではあるが有効なキットを購入を使う事によってコロナの影響がありそうな次年度内に実験が終了するように研究を推進する。
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