2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K18059
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中島 宏彰 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (70710101)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 骨形成 / R-spondin / 骨芽細胞 / Wntシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
骨折後の偽関節や骨矯正固定術後の新たな偽関節治療薬開発のため、Wntシグナルの活性化因子であるR-spondin (Rspo)2の骨形成における重要性を見出し、Bone morphogenic protein (BMP)2と協調的に骨形成を促す事ができるかを検討した。まず、骨芽細胞株MC3T3にリコンビナントヒトタンパク質rhRspo2とrhBMP2に濃度勾配をつけて添加し、この細胞の骨分化を示すアリザリン染色を行った。その結果、Rspoを添加することで、アリザリン染色は低濃度のBMP2投与下でも濃染され、骨形成が促進されている事が確認できた。更にrhRspo2を投与することで活性化される細胞内シグナル伝達経路を明らかとするため、RNA-seqを用いた網羅的解析を行った。その結果、Ankrd45 (control of differentiation), Ankrd45 (SNARE protein complex), Lhx4 (control of differentiation and development), Elfn1 (control of proliferation)など、細胞分裂や分化などに関連するRNAがBMP添加で高発現となると共に、Rspo添加をすることで、発現量がさらに増加していた。特にAnkrd45はBMP2添加により1.3倍、Rspo添加により3倍、BMP2とRspoの両タンパクの添加により6倍に高発現しており、RspoがBMP2同様に骨形成を促している大きな要因となっていた。一方で、BMP添加により発現が減少する一方で、Rspo添加により、その発現量が増加するCcdc38やSmtnl1、Vax2、Bcl11bなどのRNAも存在していた。現在、Vivoでの骨折モデルを作成し、BMPとRspoの投与実験を開始し、骨形成をCTや組織学的な検討を行い解析の予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MC3T3にリコンビナントヒトタンパク質rhRspo2とrhBMP2を投与した実験では、仮説通りBMP2刺激を加速させる形で骨形成が促進されており、その濃度勾配に応じて骨成熟が有意に促されている事を確認できた。 またRspoが骨形成を促す上で、骨芽細胞のシグナルのどの経路を刺激しているかは不明であったが、今回RNA-seq を行うことで網羅的な解析を行う事ができた。現在までの解析では、細胞の分化や増殖に関連する分子の発現量が増加しており、Rspo2はBMP2と協調的に骨形成を促している可能性が高いと考えている。今回のRNA-seqの結果を更に解析することで、Wntシグナル経路とBMP経路の相互関係が更に明らかとなることが期待される。 今年度内に至適なBMP2とRspo2の投与量を決定し、骨芽細胞におけるシグナル経路を明らかとすることが大きな目標となっていたため、予定した実験を終え、順調に計画通り進行している。 現在vivoでの骨折モデルを作成し、BMPとRspoの投与実験を開始した。動物実験の開始は今年度末に予定されており、この点においても順調に計画どおり実験は進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
BMP2とRspo2の骨芽細胞株への投与実験で、多数のRNAの発現量に変化を認めており、骨芽細胞におけるBMPシグナルとWNTシグナルの関係をより詳細に検討するため、Pathway解析を行うソフトを用いて、その解析を進めている。 また、Vivoでの骨折モデルを作成し、BMPとRspoの投与実験を開始し、骨形成をCTや組織学的な検討を行い解析の予定である。 研究計画の大きな変更を行うことなく、次年度も本課題を進める予定である。
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Causes of Carryover |
RNA-seqを行ったことで、細胞内シグナル伝達に関するデータが十分に解析でき、当初予定していた骨芽細胞でのシグナル解析の多くがスムーズに行う事が可能であった。現在行っているシグナル解析をより深め、次年度に検証作業を行う計画とする。 また、今年度はコロナウイルス蔓延に伴い実験動物搬入が困難な時期があり、動物実験開始に若干の遅れを認めた。全体の実験計画としては問題なく進んでいるが、次年度の動物実験で補足して解析を行う。
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