2021 Fiscal Year Research-status Report
軟骨細胞における代謝リプログラミングのメカニズムと役割の解明
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20K18061
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
寺部 健哉 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (10816870)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 変形性関節症 / metabolic reprogramming / 嫌気性解糖 / 2-Deoxy-D-glucose |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、軟骨細胞の変性における代謝変動意義と代謝経路の機能解析を行い、炎症下における代謝変動の制御による関節軟骨の保護につながる薬剤の検討を行っている。 これまでにglycolysis阻害剤として2-deoxyglucose(2-DG)とガラクトースの軟骨保護作用のメカニズムについて検討した。昨年度は質量分析によるメタボローム解析を行い、炎症下の軟骨細胞におけるglycolysis阻害剤の代謝変動への影響を網羅的に解析した。glycolysisの最終産物であるlactateはIL-1β刺激で亢進したが、2DGとガラクトースはこれを抑制した。またglycolysis阻害剤はIL-1β刺激によるTCA回路、アミノ酸分解、ペントース経路の亢進をいずれも抑制し、解糖系以外にも複数の代謝変動に影響を及ぼすことを明らかにした。次にglycolysis阻害剤は炎症による軟骨細胞のエネルギー代謝のkey regulatorであるAMP-activated protein kinase (AMPK)の活性化の低下を回復させることを明らかにしており、AMPKのアゴニストである5-Aminoimidazole-4-Carboxamide Riboside (AICAR)を用いて検討した。AICARはIL-1β刺激によるAMPK活性化の低下を抑制した。さらにAICARは軟骨片の炎症によるサフラニンO染色性低下も抑制し軟骨保護作用を認めた。さらにメタボローム解析でglycolysis阻害剤と同様にlactateの産生を抑制した。 次にin vivo研究として変形性関節症(OA)モデルである関節不安定化(DMM)モデルマウスを用いて、glycolysis阻害剤の関節注射の有用性について検討した結果、2DGとガラクトースは部分的に軟骨変性を抑制する傾向を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までにin vitro実験については概ね予定通りに進んでいる。特に2DGとガラクトースはメタボローム解析においてglycolysisの最終産物であるlactateはIL-1β刺激による産生亢進を抑制していたが、他の代謝の炎症による変化についても影響していることが明らかとなり、更なる研究の発展につながる可能性を示した。現在、メタボローム解析に加えて同条件下に網羅的な遺伝子発現の解析目的にRNA-seqによる検討を行っている。AICARは研究開始前に仮説通りに軟骨保護作用を有し、glycolysis阻害剤と同様に炎症下のlactateの産生亢進を抑制した。さらにflux analyzerで細胞内代謝変動を解析した結果、glycolysis阻害剤と同様にglycolysis亢進を抑制したことを確認した。in vivo研究としてOAマウスモデルを作成し、2DG、ガラクトース、AICARの関節注射の効果を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までに上記検討を行った結果、来年度はin vitro、 in vivoの各々について以下の研究を進める予定である。 In vitroとして他の軟骨変性モデルとして脱分化モデルを用いて行う。とくに牛関節軟骨を数回継代すると脱分化し軟骨細胞の表現型を喪失するが、これにより細胞内代謝変動がどのように変化をするかglycolysis関連遺伝子の発現とflux analyzerによるglycolysisと好気性代謝の変動について確認する予定である。次に2DG、ガラクトース、AICARはメタボローム解析を行った結果、解糖系以外の代謝変動も制御していることが明らかになったことから、この代謝産物に関連する遺伝子群を網羅的に解析するためにRNA-seq法を行った。本年度はこの結果をメタボローム解析の結果と統合する解析を進める予定である。これによりマルチオミクス解析となり、軟骨変性における細胞内代謝変動の役割の解明につながると考える。さらに現在、他の代謝としてグルタミン代謝と脂肪酸代謝の阻害剤を使用して検討したところ、glycolysis阻害剤と同様に軟骨保護作用を有する結果を得られており、そのメカニズムをglycolysis阻害剤と比較して検討していく。特に、これらの細胞内代謝変動を制御するAMPKが重要な役割を果たしているため、上記試薬の各々についてAMPKの活性化のメカニズムを明らかにすることを目標とする。 In vivo研究としてDMMマウスモデルを用いてglycolysis阻害剤の関節注射が軟骨変性を抑制する傾向を示す結果が得られているが、本年度は検体数を増やし、X線学的、組織学的検討を進める。さらにglycolysis阻害剤に加えて、AICARとグルタミン代謝阻害剤、脂肪酸代謝阻害剤について同様にDMMマウスモデルに対する関節注射の有用性についても検討する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度までに研究を継続してきたが、in vivoの実験をさらに進める必要があり、今後の継続が必要なため次年度使用額が生じている。今後in vivoの研究を進めるために変形性関節症モデルマウスを作成してglycolysis阻害剤である2DG、ガラクトースに加えて、AICARについても検討を進めていく予定である。
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Research Products
(11 results)