2022 Fiscal Year Research-status Report
エピゲノムを標的とした骨粗鬆症に対する新規治療標的分子の探索
Project/Area Number |
20K18066
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
柳原 裕太 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 特定助教 (20865703)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Dnmt1 / エピジェネティクス / 軟骨分化 / 成長軟骨 / エネルギー代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、加齢に伴う疾患の多くは、DNAの塩基配列の変化を伴わない後天的な遺伝子発現の制御機構であるエピゲノムの異常が関わることが分かっている。そこで、我々はエピゲノムの一つであるDNAのメチル化に注目し、骨・関節の恒常性維持のメカニズムの解明に取り組んでいる。本研究において我々はDNAメチル化酵素であるDnmt1を四肢の間葉系幹細胞特異的に欠損させた(cKO)マウスを用い、種々の解析を実施し、当該年度までに次のような結果を得た。 cKOマウスの長管骨の骨長はコントロール(Ctrl)マウスの45-60%程度であり、顕著な長管骨の短縮を示した。組織学的解析の結果、1週齢において増殖軟骨層の菲薄化、肥大軟骨層の増大および石灰化の促進を認めた。これらの結果から、cKOマウスでは軟骨細胞分化が促進していることが示唆された。つぎにDnmt1によって発現制御され、軟骨細胞分化に影響を及ぼす遺伝子を同定するため、RNA-SeqとMBD-Seqの統合解析により、Dnmt1欠損に伴うDNAメチル化の減少によって発現増加した遺伝子を絞り込んだ。その結果、DNAメチル化低減により発現上昇した上位4遺伝子がエネルギー代謝に関連していた。 そこで当該年度では、細胞内エネルギー代謝に注目し、研究を展開した。メタボローム解析を実施した結果、Dnmt1 cKO軟骨細胞において石灰化に重要な役割を担うATPをはじめ、TCAサイクル及び解糖系の代謝産物のほとんどが高値を示すことが明らかとなった。さらに、Ctrl 軟骨細胞は、グルコースおよびグルタミン不含培地では石灰化が認められなかったが、cKO 軟骨細胞は同じ条件下で石灰化した。 これらのことから、DNAメチル化維持機構は、軟骨細胞エネルギー代謝を介して軟骨細胞の石灰化による骨格形成を制御している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は職務上の都合により研究時間を確保できなかったが、当該年度においては特に不測の事態は起きず、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
近年Dnmt1が、変形性関節症(OA)の病態進行に伴い関節軟骨に発現が増加することが報告されており、その役割が注目されている。しかしながら、OAにおけるDnmt1の役割については、そのほとんどが不明であった。本研究のこれまでの結果から、DNAメチル化維持機構は、エネルギー代謝を介して軟骨細胞の分化を制御する可能性が示唆されている。そこで今後は、OAの進行に伴い関節軟骨に発現が増加するDnmt1が病態に及ぼす影響を解析し、エネルギー代謝を調整することがOAの治療標的として有用か確認する。
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Causes of Carryover |
昨年度、職務上の都合により、研究時間が確保できず、予定額のほとんどを使用することができなかった。本年度は順調に進展したが昨年度分の研究費と合わせて使用するまでには至らなかった。 研究期間を延長し、今後の研究進展のため合理的に使用する予定である。
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